会社の従業員が問題なく働き続けられたらいいですよね。

でも、突然働けなくなる可能性は誰にでもあります。

そこで何らかの理由で従業員が働けなくなった場合、ひと休みしてもらえる“休職”の制度を整えてみませんか?

退職より前に休職制度を提案できれば、雇用の可能性は広がります。

休職について学んで、経営者と従業員がともに安心して働ける会社づくりを目指しましょう!



休職とは

休職とは主に労働者側の事情により、会社が従業員に勤務しないよう命じている状況のこと。

休職に関する法律上の義務づけはありません。

法令に反しない限り、会社が福利厚生の一環として自由に定められる制度です。

捉え方も様々ですが、従業員にとっては退職を悩む前に利用できるセーフティーネットになります。

休職のパターンやメリット・デメリットを考慮して、導入を検討しましょう。

休職の3パターン

休職の3パターン

休職には、大きく分けて下記3つのパターンがあります。

  1. 使用者からの休職命令
  2. 労働者から申し出る休職
  3. 労働災害による休職

①:使用者からの休職命令

使用者側から、従業員に休職を命じるケースです。

<事由例>
  • 従業員の心身に異常がみられ、業務に支障が出ている場合
  • 無断欠勤を続ける従業員に対し、解雇を猶予したい場合

使用者は、従業員の健康に対して安全配慮義務を負っています(労働契約法第5条)

遅刻・業務上のミスが急に増えるなど、何らかの疾患の発症が疑われる社員については、具体的な問題を指摘した上で医療機関への受診を勧めるといった対応が必要です。

診断書などで休職事由があることを客観的に証明できれば、就業規則に規定がなくても休職命令は出せます。

しかし労使双方が納得した上で休職するためには、休職命令について就業規則に盛り込む方がベターです。

②:従業員から申し出る休職

休職制度の大部分で想定されているのが、従業員側が自発的に休職を申し出るケースです。

このケースは様々な事情・理由によって従業員が休職を申し出て、会社が承認すれば成立します。

<事由例>
  • 私傷病*休職…業務に起因しない病気やケガの療養を目的とした休職
  • 自己都合休職…ボランティア活動など、従業員の都合による休職
  • 留学休職…留学のための休職
  • 事故休職…私的な事故を起こしたことによる休職
  • 起訴休職…起訴された場合の休職

私傷病*…業務に起因しない、労働者のケガや病気のこと。

③:労働災害による休職

業務中のケガや、仕事に原因があると認められた病気による休職のことです

労働災害の場合、会社の意思にかかわらず法令の定めに従って労災給付等が取り扱われます。

 

従業員の安全には目を光らせていようっと!

会社側のメリット・デメリット

休職制度を設置することで、会社側にメリット・デメリットがもたらされます。

私傷病による一般的な休職を想定してご紹介。

メリット

  • 優秀な従業員に問題が生じた場合、雇用関係を継続する手段になる
  • 福利厚生の充実により離職率の低下・安定した人材確保が見込める
  • 社員が安心して働ける土壌づくりになる

休職制度を整えて就業規則に記載しておけば、従業員の緊急事態にもスムーズに対応できます。

デメリット

  • 休職者の穴埋めが必要
  • 休職者が復職する確証がない
  • 復職の確約がないため、新しい従業員を雇いづらい

経営者の意図しない休職が起こらないためにも、デメリット会社の規模をしっかり考慮することが大切です。

休職制度があると、従業員が困ったときの選択肢を増やせるね~

休職中の給与について

休職中の従業員に対しては、給与を支払う義務はありません(就業規則内で休職中に給与を支払う旨を記載していない場合)。

休職は主に労働者側の事情で、労働者が就労しないように命じられている状況です。

就労を禁止されているので、休職期間中の給与は発生しないものと考えられています。

その代わりに従業員は、休職した事由によって下記のような給付金を取得するのが一般的です。

  • 傷病手当金
  • 休業補償給付

ここからは、休職中に受けられる給付金の種類と受給条件、給付の流れを開設します。

休職中の給付金その1:傷病手当金

傷病手当金とは公的医療保険(=健康保険、国民健康保険など)の被保険者が、保険者(=全国健康保険協会など)から受け取れる給付金のこと。

療養中の生活保障として、主に私傷病休職の従業員に適用されます。

傷病手当金の受給条件

傷病手当金の受給条件

従業員が傷病手当金を受給するには、下記4つの条件をすべて満たすことが必要です。

①:業務外の事由による病気やケガで療養中であること

傷病手当金は健康保険から出る給付金なので、業務外の事由による病気やケガで療養中であることが条件です。

業務に起因する病気・ケガは休業補償給付(後述)の対象になります。

②:療養のため仕事に就けないこと

傷病手当金は働けないことに対する所得補償の意味合いがあるので、労務不能であることが必要です。

労務不能であるかどうかは、被保険者の仕事の内容を考慮して個別に判断されます。

これまで従事していた業務ができなくなった場合に、労務不能と考えるのが一般的です。

③:4日以上連続して仕事を休んでいること

労務不能かどうかを見極めるため、傷病手当金には3日間の待期期間が設けられています。

この待期期間が完成して、4日目にはじめて傷病手当金の支給がスタート。

待期期間には、

  • 年次有給休暇
  • 土日・祝日等の公休日

も含まれるので、給与の支払いの有無は関係ありません。

就労時間中に業務外の事由で病気やケガが発生した場合は、発生した日を待機の初日として考えます。

④:休業した期間に賃金の支払いがないこと

傷病手当金は療養期間中の生活を保障するものなので、事業主からの賃金が十分に支払われている間は支給されません。

休職期間中に賃金の一部が傷病手当金より少ない額で支払われた場合は、その差額が支給されます。

給付の内容

傷病手当金の支給期間は、最長で1年6ヶ月間です。

支給額を会社で計算することはありませんが、下記のように算出されます。

1日あたりの支給額 = [支給開始日以前の継続した12ケ月の各月の標準報酬月額の平均した額] ÷ 30 × 2 ÷ 3

(引用:全国健康保険協会HP「傷病手当金について」)

直近12ヶ月の平均月収額から日額を計算し、日額の2/3が一日当たりの支給額です。

また入社から12ヶ月未満の場合は、

  • 入社月から支給開始月までの標準報酬月額の平均額
  • 標準報酬月額*の平均額

上記のいずれか低い額を使って計算します。

標準報酬月額*…報酬月額(会社が支払う1ヶ月分の給与額)を等級表にあてはめたもの。

休職中の給付金その2:休業補償給付・休業特別支給金

休業補償給付とは、労災保険から支給される給付金のこと。

業務上の事由(業務災害)または通勤によるケガや病気(通勤災害)によって療養中の従業員に支給されます。

休業特別支給金とは、休業補償給付に加えて支給される給付金のことです。

休業補償給付・休業特別支給金の受給条件

休業補償給付・休業特別支援金の受給条件

従業員が休業補償給付・休業特別支給金を受給するには、下記3つの要件をすべて満たす必要があります。

①:業務・通勤によるケガや病気によって療養していること

療養の理由が、業務に起因するケガや病気であることがポイント。

会社に向かう途中の自動車事故や、駅の階段から転んでのケガなども対象になります。

②:労働に従事できない状態であること

これまで従事していた業務ができなくなる労務不能の状態であることが条件です。

③:賃金を受けていないこと

平均賃金の60%以上の賃金を受けている場合、不支給となります。

しかし賃金ではなく補償金であれば、問題ありません。

給付の内容

休業補償給付・休業特別支給金 給付の内容

上記3つの要件を満たした場合に、4日目から休業補償給付と休業特別支給金が支給されます。

支給額は下記の通りです。

  • 休業補償給付…(給付基礎日額*の60%)×休業日数
  • 休業特別支給金…(給付基礎日額の20%)×休業日数

給付基礎日額*…原則として労働基準法の平均賃金に相当する額のこと。

2つの給付金によって、労災による休業への補償は実質80パーセントになります。

休業の初日から3日目までが待期期間です。

必ずしも連続した休業でなくてもよく、通算で3日間の休業があれば完成します。

待期期間の扱い

待期期間の扱い

待期期間の扱いは、業務災害労務災害かで異なります。

  • 業務災害の場合

待期期間の休業補償は雇用側が行います。

休業補償とは労働基準法に基づいて、1日につき平均賃金の60%を支給することです。

  • 通勤災害の場合

通勤災害による休業の場合、待期期間中の休業補償を雇用側が行う義務はありません

就業規則への記載事項

就業規則に記載する際は、絶対的な軸となる原則をシンプルにまとめましょう。

様々な事態に対応できるように、広がりを持たせた表現を入れるのも効果的です。

休職制度に関して最低限記載すべき主な内容は、下記の6点。

  1. 会社として認められる休職事由を選別
  2. 休職期間
  3. 給与の有無
  4. 社会保険料の徴収方法
  5. 復職の判断基準
  6. 休職期間満了時の取り扱い

①:会社として認められる休職事由を選別

まず会社として休職を認められる事由を選別します。

中小企業の場合は事業規模や休職者による支障を考慮し、私傷病などに限定して休職を認めることも効果的です。

②:休職期間

休職期間は、休職事由ごとに決めるのがオススメ。

またイレギュラーな事態に対応できるような規定を最後に記載しておくと、より安心です。

<具体例>
  • 私傷病による欠勤が1ヶ月を超え、療養の継続が必要な時は3ヶ月の休職とする。
  • 復職後、6ヶ月以内に同一または類似の事由により再び欠勤した場合、従前の休職期間と通算*する。
  • 特別な事情で休職させることが適当と認められる時は、必要と認めた期間を休職とする。

通算*…ある一定の期間内を通じて、全部を含めて計算すること。

年次有給休暇について

年次有給休暇について

休職期間を考える際に、年次有給休暇(以下「年休」)をどのように取り扱うかも定めましょう。

年休はあくまでも、元々働くべき日の労働を免除するものです。

そのため休職期間中に年休の付与はできません

しかし休職を退職前のセーフティーネットと考えるなら、休職に入る前に年休を消化させるというのも1つの手です。

さらに、私傷病の場合は数日分の年休を残して休職できるといったルールにすると、復職後の通院などに適用できます。

休職と年休をうまく組み合わせて、従業員が安心できる制度を検討しましょう。

具体例
  • 年次有給休暇をすべて消化しても症状の改善が見られない場合に、休職を適用する。
  • 私傷病の場合に限り、3日間の年次有給休暇を残した上で休職を適用する。

③:給与の有無

法律上、休職中の従業員に給与を支払う義務はありません。

休職期間に給与を支給するかどうかは、会社の采配に委ねられています。

しっかり取り決めて就業規則に規定し、労使間でのトラブルを防ぎましょう。

④:社会保険料の徴収方法

休職中の従業員にも、社会保険料は発生します。

社会保険とは、主に健康保険厚生年金保険介護保険のこと。

休職者を無給にすると給与から天引きできなくなるので、従業員の負担分は本人から徴収する必要が生じます。

会社が立て替えるよりも、毎月休職者から徴収する取り決めを結ぶのがオススメ。

会社にとっては未徴収のリスクを、休職者は一括返済の負担を軽減できます。

⑤:復職の判断基準

復職の判断基準を明示することで、不当解雇退職トラブルを回避できます。

復職に向けたプランを従業員ごとに考えるためにも、就業規則に原則をまとめることは大切です。

<具体例>
  • 私傷病による休職から復職する場合は、医師の診断書を提出するか、会社が指定する医療機関での診断を受けなければならない。
  • 会社は、医師による診断内容及び当該社員の業務内容等を総合的に勘案し、復職させるかどうかを決定する。
  • 休職事由の消滅を会社が認めた場合は原則として休職前の職務に復帰させるが、旧職務への復帰が困難な場合は異なる職務に配置することがある。

⑥:休職期間満了時の取り扱い

休職期間が満了しても従業員の復職が困難である場合を想定し、休職期間満了時の取り扱いについても定めます。

規定していないと解雇トラブルに発展しやすいので、忘れずに取り決めましょう。

<具体例>
  • 従業員が、復職後6ヶ月以内に同一または類似の事由により欠勤・完全な労務提供が出来ない状況に陥った場合、直ちに休職させる。
  • 休職期間満了時までに休職事由が消滅しない時は、満了の日の翌日をもって自然退職*とする。

自然退職*…労働者または会社に退職の意思があるかどうかに関わらず、労働契約を終了する退職。

休職を許可する前に、事前準備をしっかりと!

会社側の対応の流れ

会社側の対応の流れ

従業員に休職を許可するまでの流れを、私傷病のケースを想定して解説します。

就業規則の取り決めに沿いながら、柔軟な対応を心がけましょう。

  1. 医師に診断書をもらうよう指示する
  2. 対象従業員にヒアリングする
  3. 業務の引継ぎを行う

①:医師に診断書をもらうよう指示する

従業員が休職を申し出た時点で医師の診断を受けていなかったら、診断書をもらうように指示します。

また従業員の意思に関わらず、会社が従業員の心身に不調を発見した場合、産業医への面談医療機関への受診を勧めましょう。

診断書は傷病手当金の受給や、休職期間の検討に必要です。

②:対象従業員にヒアリングする

ヒアリングを行って従業員に直接話を聴き、状況を確認しましょう。

就業規則で定める休職の要件に該当するかを検討し、該当するなら休職への手続きを進めます。

産業医がいる企業の場合は、対応法を相談するのがベストです。

ヒアリングを通して、

  • 休職事由・休職期間
  • 休職中の賃金
  • 社会保険料の徴収方法
  • 復職できない場合の手続き

などを就業規則と照らし合わせて決定し、対象従業員に説明します。

その他に取り決めるべきことは、下記の2点です。

  • 休職期間の連絡方法
  • 復職へのフォローアップ

休職期間の連絡方法

休職期間の連絡方法をあらかじめ決めることはとても重要です。

  • 連絡ツール
  • 連絡の頻度
  • 担当者

を明確にすれば、会社側・休職者ともに混乱せずにすみます。

コツは連絡窓口を一本化し、シンプルに取り決めることです。

休職者が療養に専念できる環境づくりに、会社としても責任を持って取り組みましょう。

復職へのフォローアップ

復職に向けたフォローアップを具体的にすることで、休職者の不安をやわらげることができます。

従業員ごとに必要なステップを検討し、提案しましょう。

<具体例>
  • 定期的な面談の予定
  • リハビリ出勤の有無
  • おおまかな復職プランの作成(復帰日、就業上の配慮など)

③:業務の引継ぎを行う

休職する従業員の様子を見て、可能であれば業務の引継ぎを行います。

必要な連絡先や作業の手順が明示された引継ぎ書があれば、穴埋めもスムーズです。

突然の休職を想定し、普段から業務管理を見直すことも効果的。

従業員の休職に向き合って、もしもの場合に備えよう!

本記事では休職に関して、

  • 休職とは何か
  • 休職中の給与等について
  • 就業規則への記載事項
  • 会社が休職に対応する流れ

をご説明しました。

休職制度を整えて従業員と共有することで、みんなが安心して働ける環境づくりにつながります。

休職に関する疑問やお困りの点があれば、いつでも弊所までご連絡ください。

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