美容サロンの法人税 計算と節税のポイント
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美容サロン経営と税金の基礎知識
個人事業主としての美容サロン経営者にとって、税金の知識は非常に重要です。ここでは、美容サロンに関連する主な税金と、それらの計算方法について具体的に解説します。
美容サロン経営者が直面する主な税金は、個人事業者であれば、所得税(復興特別所得税を含みます)、住民税及び消費税があります。なお、住民税のうち所得割は前事業年度の所得金額に応じて課税されます。
また、美容サロンのうち美容師・理容師免許乃至は医療行為を行うサロンで医師免許が必要な事業であれば原則として個人事業税が5%課税されます。個人事業税は住民税の所得割と同様に前事業年度の所得金額に応じて課税されます。
美容サロンのうち、ネイルサロン及びアロマセラピー等の国家試験を要しない業種は個人事業税の納税義務はありません。
他にも、椅子や洗面設備等事業用の償却資産を所有していれば、償却資産税があります。いわゆる固定資産税です。
税金ではありませんが、個人事業主であれば国民健康保険及び国民年金に加入する必要があります。
また、美容サロンが消費税の免除を受けることができるケースもあります。特に、新規開業したサロンでは、初期の数年間は消費税の納付が免除されることが多いのです。
インボイス制度については、得意先が会社や事業者であればインボイス番号が必要となる可能性があります。しかし、個人顧客を主な得意先とする美容サロンにおいては、インボイスの登録は急ぐ必要はないケースが多いです。
美容サロンを経営していく中で、経費を含む費用と同様に税金についても考慮することが重要です。本コラムをご覧いただいている方には周知の話題かと思いますが、美容サロンを始めるには、多額の初期投資が必要となるケースがあります。店舗を借りて内装工事を行い、事業に必要な器具・備品及び材料を購入されるのが一般的といえます。広告宣伝費もそれなりに必要となります。
売上が順調に伸び、費用を上回る利益が計上できたとしても、その利益を基準にかかる所得税等の税金は原則的に期限内に納付しなければなりません。
利益に関係のない償却資産税及び消費税も同様に納付しなければなりません。
そして、売上から費用と税金を控除した残額が手取り金額として残ります。
仮に赤字となり、利益を基準にかかる税金の納付をする必要はなくとも、利益に関係のない償却資産税及び消費税は納付しなければなりません。赤字ということは手元資金も不足気味となりえますが、それでも、償却資産税及び消費税は納付する必要があることから納税資金を準備しておく必要があります。
また、年度中に予定外の支出を行うかの決定及び来期の予算計画を考える際にも税金を考慮することで精度の高い経営意思決定ができます。
個人事業主としての税務:必要な知識と申告方法
美容サロンを個人事業主として運営する際、税務申告は非常に重要な役割を果たします。このセクションでは、個人事業主としての税務申告の基本と、節税に繋がる経費計上の方法について、実践的なアドバイスを提供します。
個人事業主として事業を始めるには、開業届を税務署と都道府県や市町村に提出する必要があります。
個人事業主の税務申告には、主に青色申告と白色申告の2つの方法があります。青色申告を選択する場合、青色申告承認申請を税務署に提出する必要があります。開業届を提出するときに一緒に提出することをお勧めします。
青色申告では、最高65万円までの特別控除特別控除を利用できる他、赤字が出た場合にはその損失を翌年以降に繰り越すことが可能です。たとえば、年間の収入が800万円で経費が900万円の場合、100万円の赤字が生じますが、青色申告を利用することでこの赤字を翌年以降3年間繰り越して税負担を軽減できます。
また、経費計上は個人事業主にとって重要な節税手段の一つです。例えば、美容サロンの場合、美容用品の購入費やサロンの装飾にかかる費用、広告宣伝費などは経費として計上することができます。
青色申告を行う上での注意点は、日々の売上、購買等の取引を正しい会計処理で漏れなく仕訳を計上し決算書を作成する必要があるという点です。正しく漏れなく仕訳を計上することは、青色申告に必要というだけでなく、ご自身の事業の財政状態及び経営成績を把握する上で重要となります。つまり、資金の状況、負債の状況及び利益の状況について把握をし、今後どのように経営を行うべきかの重要な資料となります。
青色申告の特典として、美容サロンにおいては損失(欠損金)の3年間の繰り越し可能な点がメリットとして挙げられます。開業初年度においては、経営している美容サロンの認知度がどうしても低くなりがちで、売上が思った以上に上がらないことはよく見受けられます。当然、赤字になる可能性があります。しかし、時が経過するつれ、経営努力によりお客様の認知度が上がって売上も上がり、利益が計上されるでしょう。その際の利益は繰り越された欠損金と相殺され、税負担が軽減されます。
経費については、取得価額が10万円未満の資産購入は購入時の事業年度の経費となります。取得価額が10万円以上20万円未満の資産購入は一括償却資産として3年間で均等に経費とできます。これらの資産は償却資産税の対象になりません。
また、取得価額が10万円以上30万円未満の資産購入は少額減価償却資産として購入時の事業年度の経費となります。但し、上限として1年につき300万円までです。 少額減価償却資産は償却資産税の対象になります。
法人化するメリット:節税から社会的信用まで
美容サロンを経営するうえで、事業の拡大とともに法人化を検討することは、経営戦略の重要な部分です。もちろん、事業の拡大をしていなくとも、個人事業主が法人成りを行う乃至は開業当初から会社設立を選び、いわゆるマイクロ法人を設立することも検討する価値はあります。法人化には、税務上の利点だけでなく、ビジネスとしての信用度向上など様々なメリットがあります。
特に、法人化による税率の変化は大きなメリットの一つです。例えば、個人事業主の場合、所得税率は最大45%に達することがありますが、中小法人(資本金1億円以下)の場合は現時点の税制では課税所得が800万円以下であれば15%、800万円を超えた部分は23.2%の法人税率が適用されます。これにより、事業の収益性が向上するだけでなく、再投資や事業拡大のための資金が増えることにも繋がります。
さらに、法人化により社会的信用が向上します。これにより、銀行からの融資を受けやすくなるだけでなく、大きな取引先とのビジネスチャンスが開かれることもあります。たとえば、法人としての信用に基づき、新しい店舗の開設や設備投資のための資金を容易に調達できるようになります。
法人化のメリットは、上記記載のほか、従業員を個人事業主と比べて雇いやすくなることがあります。社会的信用の向上という点もありますが、社会保険及び厚生年金保険が法人と個人の折半となります。個人事業主の場合、従業員の健康保険と国民年金は従業員負担となります。とすれば、従業員も安心して応募し勤務してくれるでしょう。
また、最終赤字を欠損金として10年繰り越せることができることです。個人事業主の繰越期間は3年までとなります。これは美容サロン経営をより長期的な視点で行えることを意味します。
法人化により美容サロン経営者が役員となり役員報酬を支給された場合には、それに対して所得税及び住民税が課税されます。また、法人が最終黒字の場合には法人税及び地方税が課税されます。つまり、法人に課税される法人税等と役員報酬に課税される所得税等がそれぞれ課税されます。この場合、タックスプランニングが重要となります。つまり、法人税等と経営者の所得税等が低くなるように設定することが理想となります。
役員報酬は期首から3ヶ月以内に変更する必要があるため、予算計画を作成し予実管理を行うことが望まれます。
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法人化による税率の変化や社会的信用の向上を図解したインフォグラフィック。
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