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「減価償却とは?」から始まる減価償却の基礎講座

「減価償却とは?」という疑問が1つ浮かぶと…

「何のために減価償却するの?」

「どうやって計算するの?」

「“耐用年数”と“償却率”ってなに?」

など、どんどん分からないことが浮かんで来ますよね…

今回はその疑問をすべて1つずつ解決しながら「減価償却」をマスターしていきましょう。

(※本記事の内容は、平成30年4月1日現在法令に順守して記載しています。)

目次

減価償却とは?

減価償却とは数年使う予定で購入したものを、資産として一旦計上した後に、数年に渡って費用にしていく会計処理。

資産の価値は、機能が低下するなどして、毎年目減りしていきます。

その減り具合はモノにより異なるため、法で定められている「減価償却」の方法を利用することで、公正に価値を減少させられます。

 

減価償却の目的

この減価償却の目的は、以下2つの目的があります。

  1. 収益と費用を同じ期間で計上し、業績を適切に示す
  2. 所有しているものの価値を適切に示す

 

1. 収益と費用を同じ期間で計上し、業績を適切に示す

1つ目の目的は、その年の収益と費用を一緒に計上し、業績を適切に示すこと。

その年の収益と費用を計上することで利益を正確に把握でき、実態に見合った業績を適切に示せます。

もし、購入時に全額を費用にしてしまうと、以下のような点で問題が発生するかもしれません。

  • 機械が壊れるまでにいくらの利益を生み出したのか把握できない
  • 実態とは異なる業績が示される

 

2. 所有しているものの価値を適切に示す

2つ目の目的は、収益を生み出す元となる“所有しているものの価値”を適切に示すこと。

壊れるまで購入時の金額のままでは、資産の価値を適切に示せているとは言えません。

法に則った減価償却計算で算出した金額は、その時々の適切な資産額です。

資産額を適切に示すと、収益を生み出す元となる資産を客観的に確認できるので、財務管理にも役立ちます。

 

減価償却できるもの

減価償却できるものは、1年以上利用する目的で取得した資産(=固定資産)の中の”減価償却資産”に限られます。

“減価償却資産”とは、使用や時の経過につれて価値が減る資産のことです。

種類 具体例
有形固定資産

建物、自動車、機械装置、パソコン、

牛、馬、なし樹など

無形固定資産 ソフトウェア、商標権、特許権

 

少額資産と一括償却資産

一般的には、減価償却の対象ではないものとして、以下2種類があります。

  1. 少額資産
  2. 一括償却資産

少額資産とは、1つもしくは、1セット(例:応接セット=椅子・テーブル=1セット)で

  • 利用期間が1年未満のもの
  • 取得原価が10万円未満のもの

のことで、2つのどちらかに当てはまる少額資産は、その年の費用として計上が可能です。

また、一括償却資産である“10万円以上20万円未満のもの”は、取得原価を3年で均等に減価償却することが認められています。

ただし一度3年で減価償却すると決めたら、廃棄したとしても3年で償却しなければなりません。

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減価償却計算に不可欠な3要素

減価償却の計算は、以下の3点を組み合わせて行うので、1つずつしっかりと理解しておきましょう。

  1. 取得原価
  2. 残存価格
  3. 耐用年数

 

取得原価

取得原価とは、その固定資産を購入した時の価値。

「購入金額をそのまま取得原価にすればいいんでしょ?」と思っている方、間違いではありません。

しかし実際は以下の例のように、取得原価に含めるべき付随費用と、含めなくてもいい付随費用が存在します。

<例>自動車を購入した場合

取得時の費用として以下の5つがあったと仮定したとします。

  • カーナビなどの付属品や特別仕様に変更した際の部品
  • 納車費用

は取得原価に含めなければなりません。

  • 自動車取得税
  • 法定費用
  • 申請代行費用

は、取得原価に含めるか費用にするか選択できます。

 含めるべき付随費用

以下に挙げるような費用は、取得原価に含めなければなりません。

  • 引取運賃
  • 購入手数料
  • 関税
  • 運送保険料
  • 据付費・取付費
  • 試運転費
  • 改良費
  • 荷役費*

荷役費*…貨物の出し入れ・積み下ろしにかかる入出庫作業・仕分け作業などの費用

 含めなくてもいい付随費用

法人税法で定められている、含めなくてもいい付随費用は以下の通りです。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税・登記または登録の費用
  • 借入金の利子

取得原価に含めるか否かは、会社の財政状態にもよるので、税理士などに相談した方が良いでしょう。

残存価額

残存価額とは、法定耐用年数が終わる時点で、残っている資産額。

有形固定資産の場合、法定耐用年数が経過したとしても、そのモノ自体が完全に消滅するわけではありません。

そのように考えると、法定耐用年数が経過した後も、貸借対照表に計上しておいた方が良いと考えられます。

そのため、1円まで減価償却を行えるようになりました。

これが「備忘価額の1円」と言われるものです。

そして1円まで減価償却したものは、そのもの自体がなくなったときに貸借対照表から消えるよう定められています。

耐用年数

耐用年数とは、減価償却資産それぞれの特徴を踏まえた上で、法律で定められた利用可能期間。

詳しい耐用年数は、国税庁ホームページ「減価償却資産の耐用年数等に関する省令をご覧ください。

減価償却の計算をするには、耐用年数に合わせて決まっている“償却率”を使用します。

また定率法では、以下2つの率を使用するため、計算がややこしく感じるかもしれません。

  • 保証率…“償却保証額”を算出するのに利用される率
  • 改定償却率…“償却保証額”が通常の減価償却額より大きくなったら、減価償却費を計上するのに利用する率
償却保証額とは?

償却保証額とは、この金額以上は最低限、償却するようにと決められた基準額。

これは改正により残存価額がなくなり、1円まで償却できるようになったことで生まれました。

定率法は1円まで償却するのに時間がかかるため、この「償却保証額」が最低限度のラインとして設けられています。

減価償却の仕訳処理

これからは実際に経理処理する場合の減価償却方法の確認です。

減価償却の計算方法を確認する前に、仕訳処理の方法を見てみましょう。

仕訳処理方法としては、以下2種類があります。

  • 直接法
  • 間接法

法人税法ではどちらの方法も認められているので、どちらの方法を選択するかは、あなた次第です。

直接法

直接法とは、帳簿に記入した資産額から、減価償却費として計上する金額を差し引く記帳方法。

仕訳処理
減価償却費 123,000 / 資産(建物など) 123,000

このように資産が減っていくので、貸借対照表に記載される資産額は、毎年減少していきます。

期末時点での資産価値をパッと把握したい方には、この方法がオススメです。

間接法

間接法とは、減価償却費として計上する金額を、減価償却累計額という勘定科目に毎年計上していく方法。

仕訳処理
減価償却費 123,000 / 減価償却累計額 123,000

このように減価償却累計額として計上されていくため、貸借対照表に記載される資産額は、廃棄するまで取得時の金額のままです。

取得時の金額を把握できるので、資産が壊れた時などに同じ資産をまた購入する予定のある方は、購入計画が立てやすく便利でしょう。

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減価償却の計算方法

減価償却の仕訳処理を押さえた上で、減価償却費として計上する金額の計算方法を確認!

減価償却の計算方法は、以下3つが法人税法で認められている方法です。

  1. 定額法
  2. 定率法
  3. 生産高比例法

今回は新たに会社を起業した方向けのため、平成30年4月1日現在法令に合わせて説明を進めます。

(平成19年3月31日以前の資産に適用する旧定額法・旧定率法は省略。)

どの例においても会計期間は、平成31年4月~令和2年3月と仮定して、計算をご確認ください。

 

①:定額法

定額法とは、毎年一定額を“減価償却費”にする方法。

計算方法
取得原価×定額法の償却率=減価償却費

ただし年度の途中で購入した場合、実際に利用した月の分を計上するため、「×利用した月数÷12ヶ月」を追加して、減価償却費を計算します。

定率法でも同様のため、念頭に置いておきましょう。

例)平成31年4月に自動車(1000万円)を購入した場合

・大型乗用車…耐用年数5年

・5年の定額法の償却率…0.2

1000万円×0.2=200万円

 

②:定率法

定率法とは、毎期決まった償却率を*未償却残高でかけた額を“減価償却費”にする方法。

*未償却残高…まだ資産から減価償却されて、費用にしていない金額

計算方法
  1. 未償却残高×定率法の償却率=減価償却費
  2. 取得原価×保証率=償却保証額

①と②を比べて…

①の方が大きい→①をそのまま減価償却費

②の方が大きい→未償却残高×改定償却率=減価償却費

改定償却率を使い始めた場合、その後も改定償却率を利用して、減価償却費を求める

例)平成31年4月に店舗用に自動車(1000万円)を購入した場合

・大型乗用車…耐用年数5年

・5年の償却率…0.5

・5年の改定償却率…1.000

・5年の保証率…0.06249

  1. 1000万円×0.5=500万円
  2. 1000万円×0.06249=62万4900円

①の方が大きい→500万円が減価償却費

 ちなみに、②の方が大きいときは?

一年目で②の方が大きくなることはありませんが、年月が経過すると②の方が大きくなるときがきます。

上記の例に合わせて考えると、②の方が大きくなるのは、5年目。

  1. 62万5千円×0.5=31万2500円
  2. 1000万円×0.06249=62万4900円

②の方が大きいため、62万4900円×1.000=62万4900円

しかし最終年度は“備忘価額の1円”が適用されるため、62万4899円が減価償却費です。

今回は最終年度に②が大きくなりましたが、耐用年数の途中で②の方が大きくなることもあります。

その場合は、翌年からの減価償却費の求め方が「②の方が大きくなった年の未償却残高×改定償却率」に変更。

ただし今回の例と同様に、最終年度は“備忘価額の1円”を適用する必要があるため、ご注意ください。

③:生産高比例法

生産高比例法とは、その資産の総利用量を推定し、その年に実際に利用した分を“減価償却費”にする方法。

法人税法上、鉱業用資産および鉱業権のみ適用できるため、鉄鋼業や石油鉱業などの限られた業種で利用されています。

計算方法
取得原価×当期実際に利用した分÷見積総利用量=減価償却費
例)平成31年4月に鉱山(1000万円)を購入した場合

・見積総利用量…3000トン

・当期採掘量…600トン

1000万円×600トン÷3000トン=200万円

減価償却の計算方法は、選択できる?

3種類ご紹介しましたが、「どれを使えばいいの?」と思っている方もいるかもしれません。

それぞれの減価償却資産には計算方法が決まっていて、それを法定償却方法と言います。

しかし減価償却資産の償却方法の届出書という書類を、会社設立後1年目の確定申告書の提出期限までに提出すれば、他の計算方法の選択も可能。

そして、こちらが償却方法の一覧です。

資産の種類 法定償却方法 選択可能な償却方法
建物 定額法
建物付属設備・構築物 定額法

機械装置・船舶・航空機・車両及び運搬具・工具・器具備品

(鉱業用減価償却資産・リースを除く)

定額法 or 定率法 定額法 or 定率法
鉱業用建物付属設備・構築物 生産高比例法 定額法 or 生産高比例法

鉱業用減価償却資産

(鉱業用建物付属設備・構築物を除く)

生産高比例法

定額法 or 定率法

or 生産高比例法

無形固定資産(鉱業権を除く)

生物

定額法
鉱業権 生産高比例法 定額法 or 生産高比例法

選択するなら、どれを選ぶと良い?

あなたの会社の財政状態にもよりますが…

  • 節税したい方は、定率法
  • 利益を減らしたくない方は、定額法

を選択することをオススメします。

定率法は初期の減価償却費が高く、定額法は減価償却費が法定耐用年数の間一定である点がポイントです。

費用の額を大きくしたいか、したくないかを目的に合わせて選択すると良いでしょう。

ただし利益を減らしたくないがために、その年だけ減価償却を行わないのはよくありません。

なぜなら銀行などから融資を受けるときに、減価償却費を計上している年・計上していない年があると、利益操作を疑われる可能性があるからです。

次は「減価償却」を実践的に利用してみましょう。

最後に、今回のおさらいです。

  • 減価償却の目的
  • 減価償却できるもの
  • 減価償却計算に不可欠な3要素
  • 減価償却計算の方法

一度に、今回の内容をすべて押さえるのは難しいでしょう。

専門家と連絡を取り合うときに話に出るかもしれないので、細かいことは置いておいて、ワードとして覚えておくのも手です。

わからない点などがあれば、下記のお問い合わせフォームよりご質問くださいね。

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