確定申告は必要?“損失”を申告するなら【申告書B第四表】
- 記事監修 大堀 優
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税理士・大堀優(オオホリヒロシ)スタートアップ税理士法人代表。1983年、愛媛県出身。2013年に税理士登録をした後、2015年2月に独立開業しスタートアップ会計事務所を設立。 2017年1月、社会保険労務士事務所を併設する。2021年6月に会計事務所を税理士法人化、8月に横浜オフィスを開設。2023年4月に銀座オフィスを開設。
【会社設立をしたい方へ一言】みなさんの不安を払拭できるように、“話しやすさNo.1の事務所”として寄り添ったサポートを心掛けています。なんでもお気軽にご相談ください!
「“損失”でも確定申告した方がいいのか?」
「“損失”が出た場合には、どの申告書を作成する?」
というように、実際に“損失”が出たときの申告について分からない方も多いでしょう。
しかし分からないからと言って確定申告をしないと、受けられるはずだったメリットが受けられません。
そのようなリスクを回避するためにも、当記事にて下記3点を解説していきます。
- “損失”でも確定申告する?どんなメリットがあるの?
- “損失”申告する際に気を付けることは?
- “損失”を申告する第四表の書き方
少しでも不安を感じている方は、当記事で確認した上で次の行動に移りましょう。
- 目次
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“損失”でも確定申告する?どんなメリットがあるの?
“損失”の場合は納める税金が生じず、申告が義務ではないことから「確定申告は必要ない」と考える方も多いです。
しかし下記のように“損失”申告すると受けられるメリットもあるので、それを得るためには申告しておくのがベスト。
- 還付金が受けられる
- 所得の証明書類が得られる
- 損益通算できる
- 【青色申告者】損失の繰越・繰戻ができる
- 【白色申告者】一部の損失に限り繰越できる
どのようなメリットなのか確認して、“損失”が出た際に確定申告するかどうか考えてみましょう。
①:還付金が受けられる
個人事業主でも、下記いずれかに該当する場合には、還付金が受けられます。
- 会社に勤めていたが、退職して個人事業主になった
- 取引先から毎月報酬を受け取る際に、所得税が源泉徴収されている
- 前年が黒字・予定納税の基準に該当したため、税務署の通知どおり予定納税*している
どの場合においても確定申告をしなければ、還付金は受けられません。
確定申告して還付されるのは、すでに納めている税金のうち「納めすぎた金額」です。
そしてその還付金を、①は初年度のみ、③は黒字の翌年のみ還付に対し、②は毎年還付される可能性があります。
予定納税*…前年の納税額の1/3の金額を7月と11月に前もって納めておく制度。予定納税の基準を確認したい方は、国税庁/「予定納税」をご覧ください。
あなたが下記の源泉徴収の対象となる報酬を受け取っている場合は、すでに源泉徴収されています。
(1)報酬・料金の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲
イ 原稿料や講演料など
ロ 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
ハ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
ニ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
ホ 映画、演劇、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
へ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
ト プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
チ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
(引用:国税庁/「源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲」)
毎年1月~2月頃に取引先から交付される「支払調書」を確認すると、前年分の明細が記載されています。
ただしこの「支払調書」を交付することは義務ではないので、すべての取引先から交付されるとは限りません。
もし「支払調書」が届かない場合は、取引先に交付を依頼しましょう。
②:所得の証明書類が得られる
個人事業主が所得を証明するには「確定申告書」を見せるしかありません。
確定申告が受理されていれば、あなたの所得額 or 所得がないことを国が証明している証になります。
所得を証明できると役立つのは、主に下記のような場面です。
- 住宅ローンを組む
- 事業融資を受ける
- 児童手当の申請(その他福祉分野における申請など)
- 国民年金保険料が優遇
実際に上記のような場面に出遭わないとピンと来ないかもしれませんが、いずれ必要になった時にないと困りますよね。
また受けられるはずの優遇措置が受けられないなど、後々のことを考えると確定申告は必要でしょう。
③:損益通算できる
損益通算とは、複数の所得を得ている方が黒字の所得と赤字の所得を相殺すること。
下記4つの所得が赤字だった場合にのみ、他の黒字と相殺(=損益通算)が可能です。
- 事業所得
- 不動産所得
- 譲渡所得
- 山林所得
上記4つの所得で生じた損失でも、損益通算できない損失もあるので注意しましょう。
この点を逆手に取り、他の所得で黒字が見込める場合に上記4つの所得の赤字を当てられれば、納税額を抑える効果アリ。
損益通算をしても損失が控除しきれないと、損失を繰越・繰戻に回します。
④:【青色申告者】損失の繰越・繰戻ができる
青色申告は3年間、損失の繰越・繰戻ができる優遇措置が設けられています。
そのため当期に発生した損失を申告しておくと、翌年から3年間で生じた利益を減少させることが可能です。
部品の仕入れに予想以上の費用がかかり、昨年(2018年)の業績は200万円の損失でした。
しかし今年(2019年)は新たに仕入れた部品がヒットしたおかげで、300万円の利益が出るまでに回復。
上記例の場合、2018年の200万円を損失申告しているか否かで、今年の納税額が大きく異なります。
損失申告していない場合の納税額は、2019年の300万円(利益)に所得税率をかけた金額です。
それに対して損失申告をしている場合は、以下の式で求めた金額に所得税率をかけるため、納税額が減少します。
300万円(2019年の利益)ー200万円(2018年の損失)=100万円
繰越できる“損失”
青色申告者の場合は、「居住用財産に係る通算後譲渡損失」以外の損失の繰越しが可能です。
たとえば以下のような損失がすべて繰り越せます。
- 純損失…損益通算できる4つの所得のうち、損益通算後でも残っている損失
- 変動所得の損失…事業所得のうち、特定品種の漁業・養殖業・印税・原稿料・作曲料など変動の大きい所得
- 被災事業用資産の損失…災害などにより、棚卸資産などの事業用固定資産に生じた損失
- 雑損失…災害などにより、生活に必要な資産に生じた損失
- 株式などに係る譲渡損失
- 先物取引・FXに係る損失
「居住用財産に係る通算後譲渡損失」とは、次の場合に生じた譲渡損失のうち、損益通算しても控除しきれない金額を一定の方法により計算した金額のこと。
- マイホームを買換えた
- 住宅ローンが残っているマイホームを売却した
この損失については、青色申告・白色申告に関わらず、一定の要件の下で損失が出た年の翌年以後3年間にわたり繰越すことが可能です。
詳しい方法・要件を知りたい方は、下記の国税庁HPをご参照ください。
⑤:【白色申告者】一部の損失に限り繰越できる
白色申告では基本的に損失を繰り越すことはできません。
損失を申告しても、その年で切り捨てられます。
しかし白色申告においても、下記3つの損失に限り、3年間の繰越しが可能です。
- 変動所得
- 被災事業用資産の損失
- 雑損失
“損失”申告する際に気を付けることは?
“損失”申告をする前に、確認しておくべき3点を紹介します。
- 適用条件に該当するか
- 必要な添付書類は把握できているか
- 【青色申告者】青色申告控除金額を含めて計算していないか
①:適用条件に該当するか
“損失”申告を行うには、下記に該当していることが条件です。
- 繰越できる損失が生じている
- 損失が生じた年以後連続して、確定申告書を提出している
損失が生じた年以後に確定申告する際は、次のいずれの場合でも、別表第四表の提出が必要になります。
□ 損失が生じた翌年も、損失が生じている
□ 前年から繰越された損失額を今年の黒字から控除する
□ 翌年に繰越控除しても、繰越損失額が残っている
②:必要な添付書類は把握できているか
別表第四表を提出する際は、損失の種類により別途下記のような書類が必要です。
下記書類をクリックすると、国税庁が提供しているテンプレートを確認できます。
- 被災者事業用資産の損失…申告書第四表(損失申告用)付表(東日本大震災の被災者の方用)
- 上場株式等に係る譲渡損失…確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
- 特定投資株式に係る譲渡損失…確定申告書付表(特定投資株式に係る譲渡損失の損益の通算及び繰越控除用)
- 先物取引・FXに係る損失…平成□年分の所得税の□申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
また還付金を受ける際は、どのパターンの還付金かによって、添付書類が異なります。
たとえば上記で紹介した「会社に勤めていたが、退職して個人事業主になった」場合は、源泉徴収票が必要など。
他の場合においては、国税庁/「還付申告」にてご確認ください。
③:【青色申告者】青色申告特別控除を含めて計算していないか
青色申告特別控除は、黒字の時に利益から差し引ける控除なので、赤字の場合には利用できません。
収入から費用を差し引いた金額が利益であれば、その金額から青色申告特別控除を差し引きます。
また収入から費用を差し引いて出た利益が、青色申告特別控除の金額よりも少ないと、利益は0ということになります。
〇:収入ー費用=利益>青色申告控除額=青色申告控除を利用しても残る利益に所得税率をかけて、納税額を算出。
×:収入ー費用=利益<青色申告控除額=利益は0なので、納税額も損失もなし。
青色申告特別控除の金額でマイナスになった分は「損失にならない」と覚えておきましょう。
“損失”が出た時の第四表(一)損益通算用の書き方
第四表は下記2枚で構成されていますが、まずは第四表(一)損益通算用を説明していきます。
第四表(一)は、今期の所得金額・損失額を把握し、損益通算するための書類です。
これからの説明に際し、国税庁HPで提供しているテンプレートを見て頂いた方が理解しやすいでしょう。
タイトル・住所・氏名
タイトルの「令和0□年分の所得税及び復興特別所得税の□□申告書(損失申告用)」は、以下の通りに埋めます。
- 1つ目の□…申告する会計期間の年号(2019年1月~2019年12月分→令和01年分)
- 2つ目の□□…確定申告ならば、確定
もし自宅以外の住所を記入する場合は、(又は事業所 事務所 居所など)のいずれかに〇を付けましょう。
1 損失額又は所得金額
この部分については、所得の種類ごとに記入内容が異なるので、一番上のAからFまで順に説明していきます。
A 経常所得
59の欄には、申告書Bの「所得金額」欄の①から⑦の合計額を記入します。
ただし①~③が損失だった場合は、④~⑦の合計額から①~③の損失額を差し引いた金額です。
B 譲渡
譲渡所得は下記のような分類があるので、予め把握しておきましょう。
所得の種類 | 概要 |
譲渡ー短期ー分離譲渡・総合譲渡(※) | 土地建物等に係る譲渡所得のうち、土地建物等を売却した年の1月1日において、所有期間が5年未満であるもの |
譲渡ー長期ー分離譲渡・総合譲渡 | 土地建物等に係る譲渡所得のうち、土地建物等を売却した年の1月1日において、所有期間が5年を超えているもの |
ちなみに今後の説明においては、下記のように略して説明を進めていきます。
- 譲渡ー短期-分離…分離譲渡(短)
- 譲渡ー長期ー総合…総合譲渡(長)
分離譲渡・総合譲渡とは、分離課税による譲渡所得・総合課税による譲渡所得という意味です。
では分離課税・総合課税は以下のように異なります。
- 分離課税…譲渡所得金額についての税額を他の所得と区別し、租税特別措置法で規定された税率によって計算
- 総合課税…譲渡所得金額を他の所得と合計し、所得税法で規定された累進税率によって計算
ちなみにどちらに該当するかは、資産の種類によるので、こちらの国税庁/「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」でご確認ください。
- 区分等…分離譲渡の各欄のみ、一般分・軽減分・特定分・軽課分*などと記入
- Ⓐ収入金額…「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」に記載した金額
- Ⓑ必要経費等…「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」に記載した金額
- Ⓒ差引金額(Ⓐ-Ⓑ)…下記参照①
- Ⓓ特別控除額…下記参照②
- Ⓔ損失額又は所得金額…下記参照③
この区分は「いつ」「誰に」「どんな」建物を譲渡したかなどの状況に応じて、振り分けられています。
どの区分に該当するかにより、税額の計算方法が異なるので、下表でご確認ください。
下表においては、以下のように略して説明を進めていきます。
課税短期譲渡所得金額…課税所得(短)
課税長期譲渡所得金額…課税所得(長)
譲渡所得(分離課税)の区分 | 計算方法 | ||
短期 | 一般分 | 平成25年1月1日以後に取得した土地や建物などの一般の譲渡 | 課税所得(短)×所得税30%(他に住民税9%) |
軽減分 |
平成25年1月1日以後に取得した土地などを国や地方公共団体に譲渡した場合の特例 (措法32条3項) |
課税所得(短)×所得税15%(他に住民税5%) | |
長期 | 一般分 | 平成24年12月31日以前に取得した土地や建物などの一般の譲渡 | 課税所得(長)×所得税15%(他に住民税5%) |
特定分 |
平成24年12月31日以前に取得した土地などを優良住宅地の造成等のために譲渡した場合の特例 (措法31条の2) |
①課税所得(長)が2000万円以下のとき→課税所得(長)×所得税10%(他に住民税4%) ②課税所得(長)が2000万円を超えるとき→(課税所得(長)ー2000万円)×所得税15%(他に住民税5%)+200万円 |
|
軽課分 |
平成19年12月31日以前に取得した自分の居住用の建物やその敷地などを譲渡した場合の特例 (措法31条の3) |
①課税所得(長)が6000万円以下のとき→課税所得(長)×所得税10%(他に住民税4%) ②課税所得(長)が6000万円を超えるとき→(課税所得(長)-6000万円)×所得税15%(他に住民税5%)+600万円(住民税の場合は240万円) |
(引用:国税庁/「譲渡所得の申告の仕方」P. 43)
Ⓒ差引金額には下記3パターンになると想定されます。
- ㋛~㋞がすべて赤字…そのまま転記するのみ
- ㋛~㋞がすべて黒字…そのまま転記するのみ
- ㋛~㋞に赤字・黒字がある
③においては赤字・黒字の状況に応じて、以下のステップを踏んで金額を求めていきましょう。
状況 | ステップ① | ステップ② |
分離譲渡(短)が赤字 | 他の分離譲渡(短)*¹の黒字から差し引く | 分離譲渡(長)の黒字*²から差し引く |
長期・分離譲渡が赤字 | 他の分離譲渡(長)*²の黒字から差し引く | 分離譲渡(短)の黒字*¹から差し引く |
総合譲渡が赤字 | 他の総合譲渡の黒字から差し引く |
分離譲渡(長)に特定損失額がある場合、 総合譲渡の黒字(短期→長期)から特定損失額も差し引く |
上記のステップを終えても残っている分離譲渡の赤字は、特定損失額*³を除き、損益通算はできません。
分離譲渡(短)の黒字*¹…基本的には、一般分→軽減分の順に差し引きます。
分離譲渡(長)の黒字*²…基本的には、一般分→特定分→軽課分の順に差し引きます。
特定損失額*³…居住用財産の譲渡損失・特定居住用財産の譲渡損失を総称したもの
Ⓒ差引金額が以下のどの状況に当てはまるかにより、特別控除額は異なります。
状況 | 特別控除額 |
Ⓒ差引金額が赤字 | 「0」を記入 |
Ⓒ差引金額のうち、㋜と㋞の合計額が50万円まで |
それぞれ㋜と㋞の金額 (赤字なら「0」) |
Ⓒ差引金額のうち、㋜と㋞の合計額が50万円を超える |
短期→長期の順に㋜と㋞の金額を記入 (50万円が限度) |
状況 | ステップ① | ステップ② |
Ⓒ差引金額がすべて黒字 | そのまま転記 | ー |
Ⓒ差引金額がすべて赤字(0を含む) | 総合譲渡には、赤字をそのまま転記 |
分離譲渡には「0」 (特定損失額がある場合には、その金額を転記) |
B 一時
一時所得とはサービス・資産の譲渡の対価ではなく、一時的に得た所得です。
たとえば、懸賞・福引などで得た賞金品が該当します。
- Ⓒ差引金額(Ⓐ-Ⓑ)…申告書B第二表「雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項」の差引金額に記載した金額(赤字なら「0」)
- Ⓓ特別控除額…下記参照
- Ⓔ損失額又は所得金額…下記参照
Ⓓ特別控除額については、下記のように記入しましょう。
- 赤字→「0」を記入
- 黒字→50万円までならその金額・50万円以上なら50万円
譲渡が赤字、一時が黒字の場合には、以下のように記入します。
- 特別控除後の一時の黒字から、総合譲渡、長期・分離譲渡の赤字を差し引く
- 差引後の金額を上段に、差引前の金額を下段にカッコ書きで記入
それでも引ききれない赤字があるときは、上段に引ききれない赤字を頭に△を付して記入しましょう。
C 山林
山林所得とは、取得してから5年を超えた山林を
- 伐採して譲渡
- 立木のままで譲渡
などで得た所得のこと。
ただし山林を山ごと譲渡する場合、土地の部分は譲渡所得に該当します。
- Ⓐ収入金額…「山林所得収支内訳書(計算明細書)」の「合計」枠の「A」の金額
- Ⓔ損失額又は所得金額…「山林所得収支内訳書(計算明細書)」の「合計」枠の「B」の金額
D 退職
退職所得とは、退職により勤務先から受け取った退職金として一時的に得た所得のこと。
下記2つの場合に受け取ったお金も退職所得に含まれます。
- 定年で退職しても同じ企業で再雇用、役員に就任する場合に受けた
- 定期賃金・退職金が未払いの場合に、未払い賃金立替払制度により国から受け取った
- Ⓐ収入金額…退職所得の収入金額の合計額(税込み)
- Ⓑ必要経費等…退職所得控除額・特定役員退職所得控除額をカッコ書き
- Ⓒ差引金額(Ⓐ-Ⓑ)…Ⓐ収入金額からⒷ必要経費等を差し引いた金額
- Ⓔ損失額又は所得金額…Ⓒ差引金額欄の金額×0.5した金額(赤字のときは0)
E 株式等
株式等に関しては、下記3種類の所得を分けて、記入していきます。
所得の種類 | 概要 |
一般株式等の譲渡 | 株式等*のうち、上場株式等以外のものを譲渡して得たもの |
上場株式等の譲渡 | 金融商品取引所に上場されている株式等を譲渡して得たもの |
上場株式等の配当等 | 上場株式等を保有していることにより受けた配当 |
株式等*…どのような株式が該当するのか、詳しくは国税庁/「株式等を譲渡したときの課税」をご覧ください
- 区分等…上場株式等の配当等のみ「株式の配当」「出資の配当」「剰余金の分配」「公社債の利子」など
- Ⓐ収入金額…下記を参照
- Ⓑ必要経費等…上場株式等の配当等には、株式の購入・出資のために借り入れた借入金の利子
- 67欄
- 68欄
- 69欄
収入金額については、下記の金額を記入しましょう。
- 一般株式等の譲渡…「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の「1所得金額の計算」の「一般株式等」の③欄の金額
- 上場株式等の譲渡…分離課税の上場株式等に係る配当所得等の収入金額の合計額(税込)
また67欄、68欄、69欄の記入方法については、コチラの国税庁/「所得税の確定申告の手引き(損失申告用)」(P.8)にてご確認ください。
F 先物取引
先物取引とは、将来にその商品をいくらで買うかを決めておく取引のこと。
この取引によって出た差額(利益・損失)が先物取引の所得です。
Aさんは1ヶ月後に、Bさんから200㎏のお米を50万円で仕入れる取引を行いました。
1ヶ月後お米を購入するためにBさんの元へ向かうと、お米200㎏が60万円まで高騰!
しかしAさんは、1カ月前に50万円で仕入れる取引をしていたので、10万円安く購入することができました。
上記の例によれば、先物取引をしてトクをしていますが、必ずしもトクをするとは限りません。
しかしどちらにせよ、予め金額を決めておけば、購入できないリスクは回避できます。
- Ⓐ収入金額…「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の「合計」の④欄の金額
- 70欄…「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の「合計」の⑫の金額
下記のいずれかの所得において、課税の特例を受ける場合は、その適用を受ける条文を記入しましょう。
- 譲渡所得
- 山林所得
- 一般株式等に係る譲渡所得等及び上場株式等に係る譲渡所得等
- 譲渡所得(短期)が軽減分に該当…「措法32」
2 損益の通算
損益通算の概要は上記でもお伝えしましたが、実際に損益通算する際の方法をこれから見ていきましょう。
この画像を見ると、下記の順に流れていると分かります。
Ⓐ通算前→Ⓑ第1次通算後→Ⓒ第2次通算後→Ⓓ第3次通算後→Ⓔ損失額又は所得金額
Ⓐ通算前
「1 損失額又は所得金額」の59~66をすべて移します。
ただし62は、「1 損失額又は所得金額」が黒字(0を含む)の場合は、記入しません。
65と66は第1次通算・第2次通算の列に並んでいるので、注意して埋めておきましょう。
Ⓑ第1次通算後
「Ⓐ通算前」の金額は、以下のパターンに分けられます。
- 「Ⓐ通算前」のA*、B⁑が両方とも赤字 or 黒字
- 「Ⓐ通算前」のAが赤字・Bが黒字
- 「Ⓐ通算前」のAが黒字・Bが赤字
A*…経常所得 B⁑…譲渡・一時
そしてこのパターンごとの計算方法・「Ⓑ第1次通算後」の欄に記入する方法は、以下をご覧ください。
計算方法・「Ⓑ第1次通算後」の欄に記入する方法 | |||
① | 「Ⓐ通算前」の欄をそのまま転記 | ー | |
② | B61、62、63、64の順にAを差し引く | Aの赤字が残る | 赤字金額を頭に「△」を付けて記入 |
Bの黒字が残る | 黒字金額を記入 | ||
③ | AからBを差し引く | Aの黒字が残る | 黒字金額を記入 |
Bの赤字が残る | 赤字金額を頭に「△」を付けて記入 |
Ⓒ第2次通算後
「Ⓑ第1次通算後」の金額は、以下いずれかのパターンが考えられます。
- 「Ⓑ第1次通算後」のA、B、C(山林)がすべて赤字 or 黒字
- 「Ⓑ第1次通算後」のA、Bが赤字・Cが黒字
- 「Ⓑ第1次通算後」のA、Bが黒字・Cが赤字
そしてこのパターンにおいて、計算方法・「Ⓒ第2次通算後」の欄に記入する方法は、以下の通りです。
計算方法・「Ⓒ第2次通算後」の欄に記入する方法 | |||
① | 「第1次通算後」の欄にそのまま転記 | ー | |
② | CからA、Bを「経常所得」「譲渡」の順に差し引く | Aの赤字が残る | 赤字金額を頭に「△」を付けて記入 |
Bの黒字が残る | 黒字金額を記入 | ||
③ | A59、B61、62、63、64の順にCを差し引く | Aの黒字が残る | 黒字金額を記入 |
Bの赤字が残る | 赤字金額を頭に「△」を付けて記入 |
Ⓓ第3次通算後
基本的には「第2次通算後」の金額を「第3次通算後」の金額を写します。
ただし、A、B、Cが赤字・D(退職)が黒字の場合は、記入金額を求めるために以下のステップが必要です。
- DからA、Bを「経常所得」→「譲渡」の順に差し引く
- DからCを差し引く
このステップを踏んだ上で、下記のように「第3次通算後」の欄に記入します。
- Cの赤字が残った場合…赤字金額を頭に「△」を付けて記入
- Dの黒字が残った場合…黒字金額を記入
Ⓔ損失額又は所得金額
1つのケースを除いて、ほとんどの場合は「第3次通算後」の金額を転記します。
その1つとは、下記赤枠の「Ⓓ第3次通算後」の「総合譲渡(長)」「一時」の2つの合計額が黒字のケースです。
この場合はこの欄に「Ⓓ第3次通算後」の「総合譲渡(長)」と「一時」の合計額に0.5をかけた金額を記入。
そして他は「Ⓓ第3次通算後」の金額を記入しましょう。
71 損失額又は所得金額の合計額
「Ⓔ損失額又は所得金額」の欄の金額を縦に計算します。
その計算後、黒字であればそのまま記入し、赤字なら金額の頭に△を付けて記入しましょう。
“損失”が出た時の第四表(二)損失申告用の書き方
第四表(二)は、翌年以後に繰越す損失額を計算する書類です。
3 翌年以後に繰り越す損失額
青色申告者の損失額
青色申告している方は「71欄の赤字金額」に「62の特定損失額に係る純損失の金額」が含まれているか、ご確認ください。
含まれていない場合は、その赤字金額をそのまま転記します。
含まれている場合は、国税庁/「所得税の確定申告の手引き(損失申告用)」(P.10)の計算式に当てはめて、算出した金額をこの欄に記入しましょう。
居住用財産に係る通算後譲渡損失の金額
「居住用財産に係る通算後譲渡損失」は、その種類ごとに必要な計算書を用いて、金額を求める必要があります。
またそれらの特例を受けるには、添付書類も必要です。
利用する特例ごとに計算書・添付書類が異なるので、詳細については国税庁/「譲渡所得の申告の仕方」をご確認ください。
変動所得の損失額
ここから下の項目においては、青色申告・白色申告のいずれかにより記入内容が異なります。
あなたの申告方法に合わせて、記入内容を確認していきましょう。
- 申告書B第一表の①「事業・営業等」の赤字
- その赤字に含まれる変動所得の赤字
- 59の赤字
- 71の赤字
のうち最も赤字の少ない金額の頭に△を付して記入
被災事業用資産の損失額
71の赤字のうち被災事業用資産の損失額があれば、
- 被災事業用資産の種類など
- 損害の原因
- 損害年月日
- Ⓐ損害金額
- Ⓑ保険金などで補填される金額
- Ⓒ差引損失額(ⒶーⒷ)
を記入し、75~77の金額を算出し記入
青色・白色関わらず、変動所得の金額計算で生じた損失額は含めないようにご注意ください。
山林所得に係る被災事業用資産の損失額
- 「2 損益の通算」の表内「C山林・Ⓔ損失額又は所得金額」の赤字
- 71の赤字
のうちいずれか少ない金額の頭に△を付して記入
山林以外の所得に係る被災事業用資産の損失額
次の方法で計算して、赤字が残った場合は、その赤字に△を付して記入
- 営業等・農業・不動産に係る被災事業用資産の損失額・それぞれに対応する所得の赤字のいずれか少ない金額
- ①で求めた金額と59の赤字のいずれか少ない金額
- ②で求めた金額と59~66の合計額(60、62の金額を除く)から78の金額を差し引いた金額(黒字なら「0」)のいずれか少ない金額(いずれかが黒字・「0」のときは「0」になる)
4 繰越損失を差し引く計算
この項目は初めて損失が出た方は、空欄で構いません。
前年より前に損失を申告している方が記入する項目です。
ただし雑損控除・医療費控除・寄附金控除などがある場合には、83欄の記入が必要になります。
国税庁/「所得税の確定申告手引き(損失申告用)」(P.13)の計算式に当てはめて求めてみてくださいね。
5~7 翌年に関わる項目
この項目は、初めて損失申告する方も、前年以前に損失申告している方も記入する項目です。
5 翌年以後に繰り越される本年分の雑損失の金額
国税庁/「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」(P.14)の計算式に当てはめて金額を求めていきます。
- 83欄が「0」の場合…C欄の金額
- それ以外の場合…M欄の金額
上記いずれかの金額を抜き出して、84欄を埋めましょう。
6 翌年以後に繰り越される株式等に係る譲渡損失の金額
翌年以後に繰り越される株式等に係る譲渡損失の金額がある方は、下記の金額を記入します。
- 確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を利用…⑪欄の金額
- 確定申告書付表(特定投資株式に係る譲渡損失の損益の通算及び繰越控除用)を利用…㉒欄の金額
7 翌年以後に繰り越される先物取引に係る損失の金額
翌年以後に繰り越される先物取引に係る損失の金額がある方は、記入します。
- 平成□年分の所得税の□申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)の㉕ or ㉖の金額
“損失”でもしっかりと確定申告して、ちゃっかり節税しましょう。
当記事では、以下の3点をじっくりと説明してきました。
- “損失”でも確定申告するメリット
- “損失”申告する際に気を付けること
- “損失”が出た時の第四表の書き方
“損失”でも確定申告した方がいいというのは、感じ取って頂けたかもしれません。
また、損失申告するのは大変そうだと感じた方も多いのではないでしょうか。
そのため実際に損失申告するとなると、なかなか一歩を踏み出せない方もいるでしょう。
しかし面倒だからと言って、“損失”を申告しないのはもったいないです!
節税になるチャンスを逃さないように、一度税理士に相談してみませんか。
※いつか困ることにならないように、今一歩を踏み出しましょう。
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