会社設立時の【役員報酬の決め方】とは?最適額をバッサリ斬る!
- 記事監修 大堀 優
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税理士・大堀優(オオホリヒロシ)スタートアップ税理士法人代表。1983年、愛媛県出身。2013年に税理士登録をした後、2015年2月に独立開業しスタートアップ会計事務所を設立。 2017年1月、社会保険労務士事務所を併設する。2021年6月に会計事務所を税理士法人化、8月に横浜オフィスを開設。2023年4月に銀座オフィスを開設。
【会社設立をしたい方へ一言】みなさんの不安を払拭できるように、“話しやすさNo.1の事務所”として寄り添ったサポートを心掛けています。なんでもお気軽にご相談ください!
「会社設立時の役員報酬ってどうしよう?」
役員報酬というのは、1度決めてしまうと変更するのに手間と労力がかかります。
できれば最初からビシッと適正額を定めたいですよね。
この記事では「創業時の役員報酬の悩みに終止符を打つ」べく、詳細に解説していきます。
- 目次
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役員報酬を経費にするルール
役員報酬は損金不算入です。
つまり会計上は費用となるものの、税法上は損金にならず経費にできません。
ただし例外があり、条件さえ満たせば役員報酬を経費にすることも可能。
役員報酬を経費にするための条件は6つあります。
①定期同額給与 | 毎月一定の時期に定額で支払われる報酬は経費にできる |
②事前確定届出給与 | 事前に税務署に届出をして、その届出の内容通りに支給される報酬は経費にできる |
③利益連動給与 | 利益に応じて支払われる報酬は経費にできる |
④役員退職金 | 役員の退職金は経費にできる |
⑤ストックオプション | 現金の代わりに支給される自社株は経費にできる |
⑥使用人兼務役員の賞与 | 取締役部長など使用人兼務役員の場合、賞与を経費にできる |
会社設立時の社長が毎月の役員報酬を経費にしたいのであれば「定期同額給与」の条件を満たしましょう。
「定期同額給与」の条件を満たしつつ役員報酬を決める際は、大前提として以下の2つを覚えておいてください。
- 報酬額は毎月同額
- 報酬額の変更は、会社設立時(翌期以降は事業年度開始)から3ヶ月以内のみ可能
会社設立1年目は、どれくらい利益が出るのか予想できない中で、毎月同額の役員報酬を決めなければならず判断が難しいです。
節税のためには役員報酬を経費にするべきですが、経費算入の条件を満たすには詳細なルールあるため専門家である税理士に相談するのが得策です。
役員報酬を決める前に知っておくべき6つのポイント
役員報酬を決める前に、以下の6つについては必ず知っておきましょう。
- 会社設立時に適した役員報酬
- 役員報酬を決める流れ
- 役員報酬の決め方
- 退職金には税金も社会保険もかからない
- 役員報酬決定後の手続き
いずれも必須の知識ですので解説していきます。
ポイント①:会社設立時に適した役員報酬
会社設立時に決めておく経費削減に適した役員報酬は定期同額給与で、定款で定めておくか株主総会で決定。
役員報酬は事業年度ごとに決定し、期首から3ヶ月以内に1回だけ役員報酬を改定できます。
毎月決まった額で計上
役員報酬は法人税法により、毎月決まった額(=定期同額給与)にしなければなりません。
事業規模によりますが、役員報酬の相場は100万円ぐらいでしょう。
定額以外で払うと、一番低い月を基準にそれより多い部分を会社の経費にすることはできません。
役員報酬は期首から3ヶ月以内に1回しか変更できない
役員報酬は1度決めたら、会社設立時(翌期以降は事業年度開始)から3ヶ月以内をに1回しか変更できません。
たとえばあなたが起業して役員報酬を60万円に決めたら、その後原則1年間は60万円のままです。
半年後に売上が大きく跳ね上がり、ボーナスとして100万円を追加して合計160万円を役員報酬として渡す場合、100万円の部分は経費として認められません。
一度決めた役員報酬は、次の事業年度までは変えられないということを覚えておきましょう。
ポイント②:役員報酬を決める流れ
役員報酬を決める際は、
①売上予測を立てる
②利益の予想額を算出
③利益の予想額から役員報酬の適正額を考える
という流れで進めていきます。
役員報酬の決め方は、経営方針やお金の分配に対する考え方によって変化。
金融機関からの融資を受けることを考えている場合や、会社に利益を残して経営の安定化を図りたい場合などは、役員報酬を抑えて“黒字”を目指しましょう。
一方、個人で住宅を購入したい場合などは、役員報酬をできるだけ高くするのが得策です。
ポイント③:役員報酬の決め方
役員報酬は起業直後の会社にとって、たいてい最も大きな費用です。
役員報酬の設定額によって、会社が納める法人税やあなた個人で納める所得税が大幅に変化。
例えば初年度の利益が2,400万円の場合、役員報酬をいくらにするかだけで支払う税金の額が約280万円も変わってきます。
ここでは、下記3つのパターンについて解説します。
- 会社の黒字額を大きくする
- 社長自身の収入を大きくする
- ESG指標を活用する
パターン①:会社の黒字額を大きくする
設備投資が必要で金融機関からの資金調達したいときは、会社の財務状況を良く見せるため、会社に利益が多く残るように役員報酬を決めましょう。
創業初期の段階から役員報酬を多額に設定しても結局、出資金から自分たちの給料を払うことになってしまいますからね。
2期目以降の資金調達を上手く進めるために、役員報酬を低く設定して計画的に“黒字”を実現するのは賢い選択と言えます。
パターン②:社長自身の収入を大きくする
個人所得を最大化して個人で自由になるお金をできるだけ確保したいときは、社長自身の収入を大きくしましょう。
例えば、個人で住宅ローンを組みたい場合などは、所得を一定確保することが必要になります。
基本的には役員報酬を増やせば増やすほど個人の所得は増加。
ただし、所得税率は所得が増えるほど税率が上昇する仕組みですので会社・個人トータルでは損をする可能性があるため注意が必要です。
パターン③ : ESG指標を活用する
ESG指標とは、企業が取り組むべき課題を示す言葉です。
「環境(Environment)」、「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字を取って名付けられました。
気候変動など多くの社会的課題を鑑み、企業はこの3要素についての取り組みを行うべきという考えが広まりつつあります。
具体的な取り組み例は下記の通りです。
- 環境…二酸化炭素排出量の削減など、環境汚染の防止
- 社会…職場環境における男女平等など、労働環境や多様性に対する配慮
- 企業統治…情報開示や法令遵守など、経営の透明性を上げる企業統治
これらに即した項目や目標値を設定して指標とし、その達成度を役員報酬の額に反映させることで、環境や社会問題に配慮する意識を経営陣に根付かせることができます。
将来的に上場や拡大を考えている経営者の方は、ぜひESG指標についても頭にいれておいてください。
ポイント④:退職金には税金も社会保険もかからない
退職金は税金的にも社会保険的にもオススメの受け取り方。
税金面では退職所得控除があります。
例:勤続年数が15年の社員の退職所得控除額は?
40万円×15年=600万円
→つまり、退職金が600万円までは実質非課税!
もし退職所得控除額を超える退職金をもらったとしても、退職所得の計算は…
- (源泉徴収前の収入金額ー退職所得控除額)×1/2
上記のように算出するため、退職金として受け取ったほうが節約になります。
ポイント⑤:役員報酬決定後の手続き
役員報酬のルールを理解して、株主総会(社員総会)で役員報酬の決議を行うと役員報酬の金額が決定されます。
しかし手続きは引き続きありますのでご注意ください。
年金事務所や市区町村に届出するなどの手続きがあります。
役員報酬を決めるときの注意点
創業時、役員報酬を決めるときに注意点が6つあります。
- 奥様への給与
- 報酬の額を大きくしすぎない
詳しくは以下の解説をご覧ください。
注意点①:奥様への給与
会社に利益が大きく出たので工夫して節税をしたいと考えた時、従業員の給与の調整は最もとっつきやすい手段。
しかし奥様に給与を渡そうと考えているのであれば注意が必要です。
奥様の場合は従業員として給与を渡した場合も、役員と同じルールが適用。
つまり奥様は“みなし役員”とされ役員報酬が支払われるため、途中から増やした分の給料は経費精算できません。
奥さんには普通の従業員として事務作業を行ってもらうとします。
奥さんの創業時からの給与は毎月25万円。
売上が順調に伸びたため、半年後から奥さんに50万円の給与を与えようとします。
しかし妻はみなし役員となりますので、25万円の役員報酬を動かせません。
つまり、差額の毎月25万円は経費に出来なくなります。
注意点②:報酬の額を大きくしすぎない
役員報酬を決めるとき、報酬の額が大きくなればなるほど
- 所得税
- 社会保険料
- 住民税
も高くなるので、注意が必要です。
とりわけ社会保険料の半分は会社負担。
月給ベースで100万円ぐらいだと、社会保険の会社負担分まで入れると年500万円以上持っていかれてしまうことになります。
複数の役員に対して多額の役員報酬を与えると、その分だけ個人の負担はもちろんのこと、会社が負担する社会保険料も大きくなります。
高すぎる役員報酬の設定はしないよう、慎重に行いましょう。
役員報酬を途中で変更する方法
役員報酬は事業年度のはじめから3カ月を過ぎると変更不可ですが、例外的に事業年度の途中で役員報酬を調整できるケースもあります。
- 役員報酬が増額できる場合
- 役員報酬が減額できる場合
それぞれ見ていきましょう。
方法①:役員報酬が増額できる場合
役員報酬の増額ができるケースは常務取締役が専務取締役に昇格するなど、仕事の責務が増えた場合に限定。
定款で定められた役員報酬総額の支給限度額内であり、不当なほどに高額でないことが条件です。
方法②:役員報酬が減額できる場合
売上が予測を大きく下回り経営状態が悪化していれば、役員報酬は減額可能。
役員報酬の減額が認められるケースは4つあります。
- 業績悪化によって役員報酬の減額がやむを得ない
- 資金調達先の銀行と借入金について協議を行った結果、役員報酬の減額がやむを得ない
- 業績悪化の際、取引先への信用を保つために役員報酬の減額がやむを得ない
- 会社の役員が不祥事を起こした際、会社の社会的信用を失墜させないよう、懲戒的に役員報酬の減額がやむを得ない
いずれの場合も、役員報酬が減額できるのは「やむを得ないときだけ」になりますが、いざという時には会社を守る“最後の切り札”になりますので、頭の片隅に入れておきましょう。
戦略的な役員報酬設定をしよう
この記事では役員報酬を決めるための判断材料について解説しました。
役員報酬設定は会社の経営に直接的な影響を与えるのはもちろんのことですが、
- 銀行からの融資
- 個人でのローン組み
などにも強く関与します。
あなたの中期的なビジョンを再確認しつつ、戦略的に設定しましょう。
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