【派遣会社の設立】までの流れ・要件・費用感を熟知して丸儲け!
- 記事監修 大堀 優
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税理士・大堀優(オオホリヒロシ)スタートアップ税理士法人代表。1983年、愛媛県出身。2013年に税理士登録をした後、2015年2月に独立開業しスタートアップ会計事務所を設立。 2017年1月、社会保険労務士事務所を併設する。2021年6月に会計事務所を税理士法人化、8月に横浜オフィスを開設。2023年4月に銀座オフィスを開設。
【会社設立をしたい方へ一言】みなさんの不安を払拭できるように、“話しやすさNo.1の事務所”として寄り添ったサポートを心掛けています。なんでもお気軽にご相談ください!
派遣会社を設立するには、クリアしないといけない要件が数多くあります。
労働者派遣業は、ほかの業種に比べて設立までのハードルが高いのが特徴的。
要件や費用のことでつまづかないように、事前の確認は必須です。
本記事では、
- 労働者派遣業とは?
- 派遣会社を設立するまでの流れ
- 派遣会社の設立に欠かせない要件
- 大まかな費用感
上記4つのトピックを軸に、派遣会社について徹底解説していきます。
派遣会社設立までの流れ・要件・費用感をマスターして、事業を活性化させていきましょう!
- 目次
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労働者派遣事業とは?
労働者派遣業は、自身の会社で雇用した労働者を派遣先に送って、労働させることを業務とする事業のこと。
以前は一般労働者派遣事業と特定労働者派遣業に分かれていましたが、現在は法改正により、区別はなくなりました。
【マメ知識】労働者派遣業と職業紹介事業の違いとは?
労働者派遣業と似た事業に、職業紹介事業というものがあります。
大きな違いは雇用契約先です。
- 労働者派遣業…労働者と派遣会社が雇用契約
- 職業紹介事業…労働者と派遣先の会社が直接雇用
派遣できない業務
派遣することのできない業務(=適用除外業務)もあります。
主に専門性の高い業務は、派遣を送ることはできません。
- “○○士”とつく業務
- 医療関連
- 港湾運送関連
- 建設関連
- 警備関連
①:“○○士”とつく業務
弁護士、司法書士など、「士」がつく業務は、資格を取得していないとできない専門的な分野のため、派遣でまかなうことができません。
ただし、
- 税理士、社会保険労務士、公認会計士、弁理士、行政書士
などの業務については、一部のみ派遣でもOKになっています。
②:医療関連
医師、看護師、歯科医師、薬剤師など医療関連の業務も、資格がないとできないので、派遣することはできません。
しかし例外として…
- 紹介予定派遣
- 社会福祉施設など病院・診療所以外の施設
- 産休・育休中の労働者の代替業務
紹介予定派遣は、派遣期間の終了後に正社員として雇用することを見込んだ派遣の形態です。
ただし強制的に正社員になるわけではなく、労働者と雇用主がお互い希望した場合に成立します。
メリットは、労働者も雇用主も仕事との相性を確認できるので、お互いのミスマッチを事前に防止できるところです。
また、病院が離島にあるなどやむを得ない理由で、都道府県の医療対策協議会が認めた場合も、医師の派遣が可能になります。
③:港湾運送関連
港湾運送業務にあたる具体的な例を挙げると…
- 船内荷役(=船の荷物の積み下ろしなどをする人)
- 筏(いかだ)や艀(はしけ)での運送
- 船に積んだ貨物の鑑定や検量
などです。
④:建設関連
建造物の建設や土木作業も派遣では補えない業務です。
たとえば…
- 家屋などの建築における資材の運搬・組立て
- 土木工事における資材・機材の配送
- 天井や壁の塗装・補修工事
- 仮設住宅の組立て
- 家屋の解体作業
などがあります。
ほかにも建設に関連する作業を派遣に任せることは、全般的にできないと思っていればOKです。
⑤:警備関連
住宅や施設などの事故や事件を未然に防ぐ警備関連の仕事も、派遣できない業種に当てはまります。
具体的には…
- ライブ会場などでの手荷物検査
- 建造物内(貴金属店など)で盗難を防止するための巡回
- イベント会場やショッピングモールなどでの車両誘導
などが主な警備関連業務です。
派遣会社設立には派遣元責任者の取得が必須!
派遣会社を設立するには、派遣元責任者の取得が必須です。
派遣元責任者とは、派遣会社に選任された派遣労働者の雇用管理・保護を担当する人のこと。
派遣労働者100人に対して、1人以上の派遣元責任者を選任しなければなりません。
派遣元責任者の要件
派遣元責任者の要件としては、主に次のようなものが挙げられます。
- 雇用管理などの経験が3年以上ある
- 派遣元責任者講習を受けてから3年以内である
- 派遣元責任者の業務に選任できる
派遣元責任者の職務内容
派遣元責任者の職務内容については、主に次のようなものが挙げられます。
- 派遣労働者であることの明示
- 就業条件などの明示
- 派遣先への通知
- 派遣先および派遣労働者に対する派遣停止の通知
- 派遣元管理台帳の作成、記録、保存
- 派遣労働者に対する必要な助言や指導実施
- 派遣労働者からの苦情の処理
- 派遣先との連絡・調整
- 派遣労働者の個人情報の管理
- 派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活設計に関する相談の機会の確保に関すること
- 安全衛生に関すること
派遣会社を設立するまでの大まかな流れ
- 派遣元責任者講習の受講
- 資本金の用意
- 登記設立
- 許可申請
の4ステップが、大まかな流れです。
ステップ①:派遣元責任者講習を受講
労働者派遣事業を行う許可を得るには、派遣元責任者講習の受講が必須です。
派遣元責任者講習は、派遣事業に関する様々な知識を労働法に詳しい専門家が行う講習会のこと。
一度受講すれば、3年間は有効です。
講習会は「一般社団法人 日本人材派遣協会」や、「公益社団法人 労務管理教育センター」など様々な機関が全国各地で開催しています。
あなたの都合に合わせた場所と日時を探して、まずは予約してみましょう。
費用は実施期間によって多少異なりますが、およそ5000円~1万円程度です。
ステップ②:資本金2000万円以上を用意する
派遣会社を設立するには、資本金が2000万円以上ないと、厚生労働省の許可がおりません。(詳細は後述)
ただし職業紹介事業(有料)なら用意する資本金は、500万円以上あればOKです。
ステップ③:必要書類を提出して登記設立
まずは労働者派遣事業に限らず、起業するときに必要な書類を揃えます。
【必ず用意する書類】
登記申請書、登録免許税の収入印紙を貼付した台紙、登記すべき事項を保存したCD-R、定款(3通)、就任承諾書、払込証明書、印鑑(改印)届出書
【場合により用意する書類】
発起人の決定書、取締役全員分の印鑑証明書、設立時代表取締役選定書
また労働者派遣事業を行うときに、必要な書類も多くあります。
労働者派遣事業を始めるための必要書類
派遣事業を始めるための必要書類も数多く存在します。
各労働局のHPにフォーマットが載っているので、そちらも参考にしてみてください。
もし数多くの必要書類を集めるのが困難な場合は、専門家に相談することをオススメします。
ステップ④:厚生労働省へ労働者派遣事業の許可申請
必要書類をそろえたら、労働局へ事業の許可申請をしに行きましょう。
申請書類を提出したあとは…
- 労働局による申請書の調査
- 事業所の現地調査
- 厚生労働省による審査内容の確認
- 厚生労働大臣から労働政策審議会の諮問
を経て許可が下りれば、労働者派遣事業をスタートできます。
最後の労働政策審議会は月1回の開催なので、全ステップで2~3ヶ月かかるつもりで申請したほうがいいでしょう。
派遣会社を設立するための主な要件
派遣会社を始めるには、守らないといけない要件がいくつかあります。
メインとなる要件は、主に以下5つ。
- 資産要件
- 派遣元責任者の要件
- 事業所に関する要件
- 適正な事業運営についての要件
- 個人情報の管理要件
①:資産要件
資産要件は…
- 基準資産額が2000万円以上
- 資産のうち1500万円以上が現金
- (資産ー負債)=負債の1/7以上
上記3つすべての要件をクリアする必要があります。
基準資産額が2000万円以上
基準資産額が2000万円以上でないと、設立できません。
決算報告書にある貸借対照表の欄を確認して、資産ー負債=2000万円以上なら、基準資産額の要件はクリアです。
資産のうち1500万円以上が現金
さらにその資産のうち、1500万円以上は現金でないといけません。
貸借対照表の現金+預金=1500万円以上ならクリアです。
(資産ー負債)=負債の1/7以上
最後に、(資産ー負債)=負債の1/7以上であることも必須です。
こちらも貸借対照表でチェックできます。
もし「資産が要件の額まで足りない!」というときは、資金調達という方法も考えてみてください。
スタートアップ税理士法人に相談すれば、その道のプロが、あなたに最適の調達方法をアドバイスします。
②:派遣元責任者の要件
派遣事業を行う事業主にも要件があります。
代表的なものを見ていきましょう。
- 未成年でないこと
- 住所が一定していること
- 健康な状態であること
- 他人を不当に拘束・束縛しないこと
- 公共の場にふさわしくない業務でないこと
- 名義借りではないこと
- 雇用管理をした経験(3年以上)があること
- 派遣元責任者講習の受講後3年以内であること
- 在留資格があること(外国人の場合)
- 労働者派遣法6条の第1号から第12号に定める欠格事由に該当しないこと
③:事業所に関する要件
事業所に関する要件は、主に2つです。
- 事業所の面積が20㎡以上
- 風俗店の密集地帯は避ける
事業所の面積が20㎡以上
事業所の面積が20㎡以上あることは必須です。
20㎡は事業で使うスペースなので、キッチンや浴室などは含めません。
風俗店の密集地帯は避ける
風営法で規制されている風俗店が密集しているところに、事業所を構えるのもNGです。
事業所として借りようとしているビルに、風営法に抵触する店舗が入っていないか事前に確認しておきましょう。
④:適正な事業運営についての要件
派遣事業を運営していくうえでの要件もいくつかあります。
メインの要件は、以下の2つです。
- 労働者派遣事業を当該事業以外の手段(会員の獲得、組織の拡大、宣伝等)として利用しないこと
- 登録時に手数料に相当するものを徴収しないこと
⑤:個人情報の管理要件
個人情報を管理するための要件も必須。
デリケートな個人情報を保護できるような策を練っておきましょう。
基本的な個人情報の管理要件は、以下の6つです。
- 個人情報を取り扱う職員の範囲が決まっていること。
- 個人情報を取り扱える職員以外のアクセスを防止する措置があること。
- 個人情報を業務以外の目的で使用や漏洩をしないこと。
- 派遣労働者から求められた場合、個人情報の開示・訂正・削除に関する規定があること。
- 個人情報を常に正確かつ最新のものにしておく措置ができていること
- 個人情報の紛失・破壊・改ざんへの防止策ができていること
収集禁止の個人情報
収集してはいけない個人情報もあるので、確認しておいてください。
大きく分類すると…
- 社会的差別につながる恐れのある情報(人種・民族・社会的身分・本籍・出生地・容姿など)
- 思想・信条(支持政党、人生観、愛読書など)
- 労働組合への加入状況(労働運動、学生運動など)
などが当てはまるので、安易に聞き出すことがないように注意しましょう。
派遣会社を設立するまでの費用感
派遣会社を設立するまでの費用感を、今回は株式会社に絞って紹介していきます。
資産要件のところで、資本金を2000万円以上用意する旨を紹介しました。
しかしそれ以外にも設立までに払う主な費用が3種類あります。
- 定款を認証する費用
- 登記する費用
- 派遣業の許可費用
①:定款を認証する費用
派遣会社に限らず、起業するときには定款認証に関する費用を公証役場に支払います。
- 定款認証手数料:5万円
- 定款に貼る印紙代:4万円
- 定款の謄本:約2,000円
あわせて約9万2000円かかるので、10万円を目安に用意したほうがいいでしょう。
ただし電子定款を利用すれば、費用を抑えることが可能です。
②:登記する費用
こちらも起業時に必ず払う、法務局への登記費用です。
- 登録免許税:15万円~
- 登記事項証明書の発行手数料:600円/1通
- 印鑑証明書の発行手数料:約450円/1通
登録免許税は、資本金の額×0.7%で算出します。
たとえば、資本金5000万円でかかる場合=35万円。
資本金が1000万円の場合は計算式上7万円ですが、最低ラインが15万円なのでその額まで引き上げられます。
③:派遣業の許可費用
派遣事業を行うときのみかかるのは、許可してもらう際の費用です。
- 許可手数料:12万円
- 登録免許税:9万円
事業所が1ヶ所の場合の合計額は、21万円。
- 許可手数料=収入印紙
- 登録免許税=領収書
上記2つを許可申請書に貼付して納めましょう。
ちなみに複数の事業所にわたる場合は、1ヶ所増えるごとに許可手数料が5万5000円ずつ加算されます。
確認事項をチェックして派遣会社を設立しよう!
今回は派遣会社について労働者派遣業の基本的なことから、
- 設立までの流れ
- 設立するための要件
- 設立までの費用感
をお伝えしてきました。
とくに要件はたくさんあるので、1つ1つ確認しながら設立の手続きをしていきましょう。
もし不安な点があれば、いつでもスタートアップ会計事務所までご相談ください。
あなたが派遣業を通して、社会に大きな貢献をもたらすことを、陰ながら応援させていただきます。
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