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トラブル回避!【残業代の計算】に関する5つのルール

残業代に関するトラブルを、一度は聞いたことがあるでしょう。

そして従業員を雇った場合、そのようなトラブルに直面することは、他人事ではありません。

ルールを守って残業代を計算・支給していれば、最悪の場合に会社を守れるでしょう。

この記事では、以下5つの「残業代の計算方法」に関するルールを確認していきます。

  1. 割増賃金は「時間外労働・休日出勤」に支給
  2. 残業代が発生する業務
  3. 残業代の計算は、1時間あたりの基礎賃金の計算から始まる
  4. 状況に合わせて割増賃金率を設定する
  5. 端数処理は基本的に切り上げ
目次

前提:残業代は、適正額を支給する

前提として「残業代の適正額」を支給するために、「残業代の計算方法」を確認していきましょう。

また、今、支給している残業代が適正か否かを確かめるというのも大切です。

従業員には残業をしたら割増賃金をもらう権利が労働基準法により認められており、従業員が適正でないと感じると訴えることもできます。

そのようなトラブルは、あらかじめ適正額を支給しておくことで、未然に防げるでしょう。

【参照】労働基準法(第三十七条)

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

(引用(一部抜粋):労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

ルール①:割増賃金は「時間外労働・休日出勤」に支給

従業員が「時間外労働」及び「休日出勤」をしたときに限り、割増賃金を支給します。

割増賃金とは、法に則って定められている割増賃金率をかけて求めた残業代のこと。

字面だけ見れば納得かもしれませんが「時間外労働」と「休日出勤」を勘違いしている方もいます。

あなたが思っている「時間外労働」と「休日出勤」が合っているのか、下記リンクにて確認しておきましょう。

ルール②:残業代が発生する業務

残業代の発生は、その業務が労働時間に含まれるか否かに委ねられています。

労働時間の定義は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間です。

労働基準法における労働時間の考え方は、過去の判例における判決理由から定義されているので、確認しておきましょう。

【参照】判決理由

労働基準法三二条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。

(引用(一部抜粋):全情報 事件名:賃金請求上告事件

普通に仕事をしている時間はもちろん、労働時間に含むと認められているのは、以下5つの作業です。

  1. 始業前の準備・終業後の片付け
  2. 着替え
  3. 手待ち時間(電話番など)
  4. 勉強会・研修
  5. 健康診断

現時点でこれらの作業を労働時間に含めて、労働時間を計算しているかどうか、確認してみましょう。

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ルール③:残業代の計算は、1時間あたりの基礎賃金の計算から始まる

残業代を計算する上でベースとなるのが、1時間あたりの基礎賃金です。

もし時間外労働・休日出勤ではない残業の場合、1時間あたりの基礎賃金が1時間ごとに通常の給料に加算されます。

1時間あたりの基礎賃金の求め方は、以下の通りです。

  1. (365日ー年間所定休日)×1日の所定労働時間÷12=1ヶ月平均所定労働時間
  2. (月給-諸手当)÷*1ヶ月平均所定労働時間=1時間あたりの基礎賃金

式にある控除すべき諸手当は、以下の6つ。

 
①:家族手当(扶養手当・子女教育手当)
②:別居手当(単身赴任手当)
③:通勤手当
④:住宅手当
⑤:1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
(賞与、精勤手当など)
⑥:臨時に支払われた手当

*1ヶ月平均所定労働時間…1日の所定労働時間×21日で代用すれば、大まかに1時間あたりの基礎賃金を求められます。

ルール④:状況に合わせて割増賃金率を設定する

1時間あたりの基礎賃金が求められたら、その時々の状況に合わせて割増賃金率を設定しましょう。

 
労働時間 割増賃金率
法定内残業(時間外労働ではない残業) 割増ナシ
時間外労働 25%
1ヶ月に45時間以上 25%を超える率(努力義務)
1ヶ月に60時間以上 50%
法定休日労働 35%
深夜労働(22時~翌朝5時) 25%

もし今月すでに60時間以上の残業をしている人が、22時から1時までの3時間残業した場合、割増賃金率は1ヶ月に60時間以上の50%に深夜労働の25%を加えた75%です。

つまり、その人の残業時間や残業をした時間帯などを考慮して、割増賃金率を設定する必要があります。

ルール⑤:端数処理は基本的に切り上げ

原則として労働時間は1分単位残業代の計算は1円単位で計算しなければなりません。

しかし以下の内容が就業規則で定められていれば、以下の処理も認められます。

  • 割増賃金の計算…50銭未満の端数は切り捨て・50銭以上の端数は切り上げ
  • 労働時間の計算…1ヶ月の労働時間を通算した際に出た30分以上の端数は切り上げ

もし週5日1日5分残業した場合、1ヶ月の残業時間の合計は100分(=1時間40分)です。

この場合30分以上の端数は切り上げられて、2時間として計算に組み込まれます。

1時間あたりの基礎賃金や、割増賃金額、労働時間などの計算では必ず端数が出るので、就業規則に定めておきましょう。

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【働き方別】5種類のルール

これから残業代を計算する上で、悩みの種になりやすい5種類を紹介していきます。

  1. 管理職
  2. 固定残業制(みなし残業制)
  3. 裁量労働制
  4. 変形労働時間制
  5. フレックスタイム

あなたの会社では採用されていなくとも、目を通しておけば、いずれ役立つときが来るでしょう。

なぜなら多様な働き方を推奨する「働き方改革」が、あなたの会社にも影響する可能性があるからです。

ルール①:管理職

管理職に就いてる方には残業代の支給が必要ないと、労働基準法で定められています。

しかし管理職に就いている方でも、午後10時~翌朝5時までの勤務には、深夜労働手当の支給が必要です。

ただし時間外労働の割増賃金率は適用されないので、深夜労働の割増賃金率を1時間あたりの基礎賃金にかけることになります。

ただし管理職と言っても、以下3つの過去の判例における"管理職"の条件を満たしていない場合は、きちんと残業代を支給しなければいけません。

1. 当該者の地位、職務内容、責任と権限からみて、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあること

2. 勤務態様、特に自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること

3. 一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていること

(引用(一部抜粋):3-5 「管理監督者」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性

ルール②:固定残業制(みなし残業制)

固定残業制(みなし残業制)とは、月給に残業代をあらかじめ含めて支給する制度です。

つまり、あらかじめ含めている時間分の残業代を毎月計算する必要はないということ。

しかしその残業代を超えた部分は、追加支給する必要があります。

固定残業代さえ支給していれば、いくらでも残業させて構わないという意味ではないので気を付けましょう。

ルール③:裁量労働制(みなし労働時間制)

裁量労働制(みなし労働時間制)とは、実際に働いた時間に関係なく、契約で決めた時間分を働いたとみなす制度です。

この制度では出退勤時間や始業・終業時間を、労働者個人の裁量で決められるため、時間外労働という概念がありません。

そのため原則として、時間外労働に割増賃金を支給しなくていいとされています。

しかし以下3点のような場合は、割増賃金が発生するので、ご注意ください。

  • みなし労働時間を8時間超に設定(8時間を超えた部分に割増賃金が発生)
  • 夜22時~翌朝5時までの深夜労働
  • 法定休日の勤務
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ルール④:変形労働時間制

変形労働時間制とは、1ヶ月単位もしくは1年単位内であれば、法定労働時間を超えた分に残業代を支払わなくていい制度です。

この制度を用いることで、各週で釣り合いが取れるため、週ごとに残業代を計算しなくて済むと思う方もいるかもしれません。

ただし以下の場合には、変形労働時間制でも、割増賃金を支給する必要があります。

  • 法定労働時間の1日8時間・週40時間を超えた分(1ヶ月単位・1年単位)
  • 特定の週・日に限り、1日10時間・週52時間を超えた分(1年単位)

とにかく変形労働時間制でも、残業代を支給するケースがあることを覚えておきましょう。

ルール⑤:フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、労働者が出退勤時間を決められる制度です。

この制度を利用すると、1日あたりの労働時間は日により異なるため、1週間や1ヶ月単位で残業時間を把握する必要があります。

以下2つが、残業時間を把握した際に割増賃金が発生するケースです。

  • 精算期間が1週間であれば40時間
  • 精算期間が1ヶ月であれば160時間~177.1時間

残業代計算は、5つのルールを守ることが肝心!

残業代の適正額は、算出できましたか?

下記5つの計算方法に基づいて、残業代の適正額を算定し、今支給している残業代と比較してみるのもいいでしょう。

  1. 割増賃金は「時間外労働・休日出勤」に支給
  2. 残業代が発生する業務
  3. 残業代の計算は、1時間あたりの基礎賃金の計算から始まる
  4. 状況に合わせて割増賃金率を設定する
  5. 端数処理は基本的に切り上げ

そして働き方別に紹介した5つのルールは、あなたの会社で必要となった際にご利用ください。

  1. 管理職
  2. 固定残業制(みなし残業制)
  3. 裁量労働制
  4. 変形労働時間制
  5. フレックスタイム

後々残業代についてトラブルが発生しないように、あらかじめ先手を打っておきましょう。

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