会社設立時の頼れるサポーター!新創業融資制度についてくわしく解説
- 記事監修 大堀 優
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税理士・大堀優(オオホリヒロシ)スタートアップ税理士法人代表。1983年、愛媛県出身。2013年に税理士登録をした後、2015年2月に独立開業しスタートアップ会計事務所を設立。 2017年1月、社会保険労務士事務所を併設する。2021年6月に会計事務所を税理士法人化、8月に横浜オフィスを開設。
【会社設立をしたい方へ一言】みなさんの不安を払拭できるように、“話しやすさNo.1の事務所”として寄り添ったサポートを心掛けています。なんでもお気軽にご相談ください!
会社を設立したばかり、起業したばかりの頃は、資金が足りなくなりがちです。
このような、事業スタート時の資金の悩みを解決してくれるのが、日本政策金融公庫の新創業融資制度です。
どのような人が新創業融資制度を利用できるのか。
申請するメリットや、審査に通りやすくなるポイントなどについて、くわしく解説いたします。
- 目次
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新創業融資制度とは
新創業融資制度は、新たに事業をはじめる人、または事業開始後の税務申告2期を終えていない人を対象にした融資制度です。
事業をはじめる前に融資を受けたい場合、事業開始から税務申告1期を終えていない場合は、自己資金の要件があり、審査・面談時に「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」の確認が必要となります。
融資限度額は3,000万円、運転資金の場合は1,500万円です。
担保・保証人が原則不要なため、個人事業主や一人で会社を設立している場合も、申請しやすい制度になっています。
税務申告1期、2期のタイミング
新創業融資制度は、税務申告1期を迎えるまでは自己資金の要件、税務申告2期を終えるまでが対象、といった決まりがあります。
この1期、2期とはどのタイミングを指すのでしょうか?
税務申告の期末は、個人事業主、法人それぞれ違います。
自分の場合はいつが期末になるのか、期限を過ぎてしまわないように、チェックしておきましょう。
法人の税務申告期末
法人が税務申告する期末は、決算日で変わります。
会社を設立して最初の決算日が1期の終わり、2度目の決算日が2期の終わりです。
会社設立日を、事業開始した創業日として計算してしまう例がみられますが、会社設立日=法人登記日となるため、注意してください。
会社設立日、決算日は企業によって違うため、創業融資を申請できる期間もそれぞれ変わります。
会社を設立してすぐに決算日を迎える場合、1期の終わりがすぐやってきてしまい、1年と少しの間しか制度を利用できません。
逆に、予定している決算日を過ぎてすぐに会社を設立すれば、約2年間のあいだ希望のタイミングで申請できます。
事業開始前に新創業融資制度を利用する場合は問題ありませんが、
「まずは創業して、様子をみながら利用を検討したい」
という場合は、申請期限を検討の上、決算日を決定しましょう。
個人事業主の税務申告期末
個人事業主の税務申告期末は、12月31日です。
開業届を提出してから、最初の12月31日が1期の終わり、2回目の12月31日が2期の終わりとなります。
新創業融資制度の申請期限を最大にしたい場合は、1月1日以降の早い段階で開業すると、余裕が生まれます。
新創業融資制度を利用する6つのメリット
新創業融資制度は、他の融資制度と比較して、これから起業する人にやさしい仕組みになっています。
会社設立を検討している人、事業をはじめたばかりの人が新創業融資制度を利用する6つのメリットをみてみましょう。
メリット1:融資がスピーディに開始される
新創業融資制度は書類の不備などがない場合、申請から融資まで1ヶ月~1ヶ月半程度で進められます。
テンポ良く事業を展開したい、会社を設立したばかりの事業者にとって、非常に助かる制度となっています。
新創業融資制度と日本政策金融公庫の他の融資を組み合わせて利用する場合、時間がかかりがちなその他の審査も早く進めてもらえます。
速やかに融資を受けたい場合は、上手に活用してみましょう。
メリット2:無担保・無保証で利用できる
新創業融資制度は、無担保、無保証で利用できる制度です。
その名の通り、新たに創業する人向けの制度のため、実績のない人でも活用しやすい条件になっています。
仮に設立した会社が倒産してしまった場合、保証人がいないだけでなく、代表者が保証人となる必要もないため、万が一の際の負担を軽減できます。
担保や保証人は、法人代表者が希望する場合、立てることも可能です。
- 担保の有無によって利率が変わる
- 代表者が連帯保証人となる場合、融資の際の金利が0.1%低減される
といったルールがあるため、金利を少しでも抑えたい場合は、担保や保証人の設定を検討しましょう。
メリット3:銀行や補助金より限度額が高い
会社を設立したばかりの場合、銀行などの金融機関は審査が通りにくく、融資を受けられる場合も額が少なくなりがちです。補助金や助成金を活用する場合も、50~200万円程度が上限となり、大きな支援にはなりません。
新創業融資制度を利用する場合は、最大3,000万円の融資が受けられるため、必要な設備を購入したり、運転資金にしたりして、事業を軌道に乗せやすくなります。
実績がなくても、これまでの経験や説得力のある創業計画書を用意すれば、大きな額を融資してもらえる可能性があるため、必要な場合は積極的に申請してみましょう。
メリット4:元金返済の据置期間がある
新創業融資制度には、元金返済の据置期間があります。
融資から最大2年までのあいだ、元金の返済はせず、金利のみを返済できる制度です。
会社を設立して、事業が波に乗るまで、半年はかかると言われています。
この間に、元本の支払いをしなくて済むと、資金繰りが楽になるでしょう。
据置期間を設定した場合、その期間も返済期間に含まれます。
そのため据置期間が過ぎた後、毎月支払う額が据置なしの場合と比較して、増える点も覚えておきましょう。
メリット5:相談・アドバイスを受けやすい
新創業融資制度は、日本政策金融公庫が創業者向けに展開しているサービスです。
そのため、会社設立について分からないことや、審査に通るためにどうすれば良いのかなど、電話や対面で相談できる窓口が多数用意されています。
【参照】日本政策金融公庫/創業前支援
必要な支援を受けながら、会社のために必要な資金を融資してもらいましょう。
メリット6:利用用途の幅が広い
会社設立にあたり、返済の義務がない補助金や助成金を活用する例がみられます。
その一方で、補助金や助成金は利用目的が決まっており、定められた用途以外に資金を使うことはできません。
希望する内容、金額の補助金や助成金があれば良いのですが、希望の用途と合う例がそれほど多くないのが現状です。
一方で新創業融資制度は、事業をはじめる際に必要な設備資金、もしくは創業後の運転資金であれば良いため、幅広く資金を使えます。
補助金や助成金は、
- 後からの支払いであること
- 申請から取得まで1年くらいかかる場合があること
- 審査を通過するのが難しいこと
といったデメリットもあります。
これらの点を考えると、新規事業者には新創業融資制度の方が向いているでしょう。
新創業融資制度を利用するデメリット
新創業融資制度には、メリットだけなくデメリットもあります。
良い面だけでなく、デメリットも知った上で、利用するかどうか検討しましょう。
デメリット1:融資の上限が低い
新創業融資制度で借りられる融資の上限は、3,000万円(運転資金1,500万円)です。
補助金や助成金よりは高額ですが、他の融資制度と比較すると融資上限が低いため、必要な金額を得られない場合があります。
上限は3,000万円ですが、事前の審査・面談で事業計画や自己資金、これまでの経験などを確認の上、決定されるため、100~1,000万円程度になるケースが少なくありません。
よりたくさんの融資を受けるなら、綿密な創業計画書を準備して、担当者を納得させられるようにしましょう。
デメリット2:自己資金が必要
新創業融資制度は、担保や保証人なく融資が受けられます。
ですが、事業をはじめる前に申請する場合は、創業資金総額の10分の1以上を自己資金で用意する必要があります。
創業資金総額を抑えれば、用意する自己資金額も減りますが、自己資金額に応じた融資額が検討されるため、必要な額の融資を受けられない可能性が高いでしょう。
これから会社設立を検討していて、事前の融資が必須という場合は、自己資金を貯めてから会社を設立すると、目的額に近い融資を受けやすくなります。
自己資金が多い方が、融資に通りやすい、というメリットもあります。
会社設立まで余裕がある場合は、自己資金の用意からスタートしてください。
デメリット3:金利が上がる場合がある
新創業融資制度の金利は、その時の状況に応じて変動します。
令和5年5月1日現在、新創業融資制度の金利は、1.97~3.00(基準利率)となっていますが、今後上がる可能性があります。
新創業融資制度の返済期間は、
- 設備資金の場合:20年以内(据置き期間2年以内)
- 運転資金の場合:7年以内(据置き期間2年以内)
となっており、一般的な融資よりも長めに設定できます。
ですが、支払っている内に金利が増えるリスクがゼロではありません。
また、日本政策金融公庫のその他融資よりも、金利が高めに設定されているため、無理のない範囲で早めの返済を目指すのがおすすめです。
金利が高いと言っても、メガバンクなどのビジネスローンよりは低い、良心的な設定です。
会社設立して間もない新規事業者は、銀行融資が通りにくいこともあり、新創業融資制度が強い味方になるでしょう。
新創業融資制度の審査を通過するポイント
会社を設立したばかりの経営者にとって、たくさんのメリットがある新創業融資制度ですが、審査を通過しなければ融資は受けられません。
新創業融資制度は、銀行での融資や補助金、助成金よりも審査が通りやすいといわれていますが、一件ごとに担当者による審査・面談が待っています。
スムーズに審査を通過して、必要な融資を受けるために、ポイントを押さえておきましょう。
自己資金をしっかり準備する
これから事業をはじめる場合、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要です。
自己資金がギリギリの場合、審査担当者に不安を与えてしまうため、できるだけ多く準備しておきましょう。
自己資金は、家族などから借りて自分の口座に振り込む、ということはできません。
通帳のお金の動きをチェックされるため、サラリーマン時代や個人事業主などとして、コツコツ貯蓄をしながら、自己資金を貯めてきたと分かるようにしましょう。
会社設立前に自己資金用の口座を用意して、毎月決まった額を振り込んでおく、という方法もおすすめです。
あわせて、これまでにローンの滞納などがないか、水光熱費などを毎月きちんと支払っているか、という点もチェックされるため、きちんと支払っておきましょう。
説得力のある創業計画書を作成する
融資が受けられるかどうか、希望に近い金額を提示してもらえるかどうかは、創業計画書の質にかかっています。
なぜ事業を成功できるのか、担当者が納得できる内容を網羅して、作成しましょう。
具体的には、
- 事業を実現するための計画
- これまでの経験やスキル、資格の有無
- 競合調査の結果や差別化の方法
- 収益を得るためのルート
- トラブルが起きた場合の対処法
- リスクに対しての備え
- 将来の展望や成長の見込み
といった内容が書かれていると、担当者が安心して融資できます。
自分で作成するのが難しい場合は、創業計画書や事業計画書作成に携わっている税理士などの士業、代行業者といった専門家へ相談する手段もあります。
一度審査に落ちてしまうと、次に申請できるのは半年後になってしまうため、時間をかけて綿密な計画書を作りましょう。
新創業融資制度と新規開業資金の違い
新創業融資制度と同じく、日本政策金融公庫が提供している制度に「新規開業資金」があります。新創業融資制度と混同しがちなのですが、利用できる期間や融資限度額などに大きな違いがあります。
新規開業資金は、新たに事業をはじめる人、または事業開始後おおむね7年以内の人であれば申し込めます。
融資限度額は7,200万円(運転資金4,800万円)と新創業融資制度よりも手厚い一方で、新創業融資制度では不要だった担保・保証人が必要です。担保・保証人を立てるため、自己資金の要件は定められていません。
新創業融資制度と新規開業資金は同時の申し込みが可能です。
「新創業融資制度だけでは運転資金が足りない」
という場合は、新規開業資金をあわせて申請してみましょう。
その他にも年齢や条件に応じた、
- 女性、若者/シニア起業家支援資金
- 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
- 新事業活動促進資金
- 中小企業経営力強化資金
といった融資制度があります。
これらの対象者である場合、新創業融資制度や新規開業資金よりも低い金利で融資が受けられます。使える制度があれば、積極的に検討してみましょう。
まとめ
新創業融資制度は、会社設立後から税務申告2期までの期間だけ使える、便利な融資制度です。
- これから会社設立を考えている
- すでに事業開始のために動き出している
- 創業したから税務申告2期を迎えていない
という方で、設備資金や運転資金を確保したい場合は、活用してみてください。
審査に通りやすくするために、自己資金や創業計画書、事業計画書が欠かせません。
必要な準備をしっかり済ませた上で申請し、事業を軌道に乗せましょう。
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