会社設立後に必要なものは?法人登記後のやることリスト
- 記事監修 大堀 優
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税理士・大堀優(オオホリヒロシ)スタートアップ税理士法人代表。1983年、愛媛県出身。2013年に税理士登録をした後、2015年2月に独立開業しスタートアップ会計事務所を設立。 2017年1月、社会保険労務士事務所を併設する。2021年6月に会計事務所を税理士法人化、8月に横浜オフィスを開設。
【会社設立をしたい方へ一言】みなさんの不安を払拭できるように、“話しやすさNo.1の事務所”として寄り添ったサポートを心掛けています。なんでもお気軽にご相談ください!
会社は設立したら終わり、ではなく、その後にやることがたくさん待っています。
法人登記後にまちがいなく手続きを進めるために、やることリストを作っておくと便利です。
今回は、会社設立後にどのような申請、準備をすれば良いのか。
するべき手続きについてくわしく解説いたします。
- 目次
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会社設立後に必要な8つの手続き
会社設立後、書類提出などさまざまな届出や手続きがあります。
まずは、何をすれば良いのか、優先順位が高い手続きから順番にみてみましょう。
地域によって提出期限が違う手続きもあります。
優先度要確認の項目は、事前に地域の自治体などへ期限をたしかめておくと安心です。
それでは、具体的な手続き内容や必要な持ち物などをチェックしてみましょう。
1.優先度高:法人用銀行口座の開設
法人用口座の開設は任意です。
ですが、取引先との会計処理、今後の税務処理を考えると、速やかに開設しておくのがおすすめです。
法人用口座開設には審査があるため、口座を持っていると取引先や顧客、融資先から信頼が得られます。
審査通過~法人口座開設まで1週間程度かかるケースが多いことから、早めに手続きを済ませておきましょう。
より信頼を得るなら都市銀行が向いていますが、銀行からの融資を受ける予定がある場合は地方銀行や信用金庫など、地域の事業を後押ししてくれる金融機関を選ぶのも一つの手段です。
手数料を抑えたい、法人口座を簡単に開設したい、という場合はネット銀行という選択肢もあります。
法人口座開設時に必要なもの
法人銀行口座を開設するために必要な書類、持ち物は金融機関によって変わります。
- 登記簿謄本
- 会社の定款
- 履歴事項全部証明書
- 法人の印鑑登録証明書
- 代表者の印鑑証明書
- 本人確認書類
- 銀行印
- 委任状(代表者が足を運べない場合)
- 名刺や会社案内、パンフレットなど
など、必要に応じて提出しましょう。
開設を希望している金融機関へ、何を用意すれば良いのか事前に問い合わせておくとスムーズです。
2.優先度高:年金事務所への届出(5日以内)
事業主が一人で経営する一人社長の企業でも、法人設立後に社会保険への加入が必要です。
法人登記後5日以内に、年金事務所で手続きを済ませましょう。
社会保険に加入する従業員がいる場合、同じく事実発生から5日以内に届出が必要です。
一定の要件を満たしている場合、パートやアルバイトの保険加入が必要なケースもあります。
自分や従業員に被扶養者がいる場合は、健康保険被扶養者(異動)届を忘れずに届け出てください。
事業所を管轄する年金事務所へ必要書類を提出します。
事業所の所在地と登記上の所在地が違う場合、実際に事業所がある年金事務所が管轄です。
年金事務所へ届け出る際に必要なもの
年金事務所へ届け出る場合、以下の書類が必要です。
- 健康保険、厚生年金保険新規適用届
- 健康保険、厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合)
届出は電子申請、郵送、窓口へ持参する方法があります。
あわせて、90日以内に発行された法人登記簿謄本(コピー不可)を用意しておきましょう。
3.優先度高:ハローワークへの届出(10日以内)
労働者を1人以上雇用する場合、労働保険の加入が義務づけられます。
このうち、雇用保険の届出をするのがハローワークです。
従業員を雇用したら、10日以内にハローワークで保険加入手続きを済ませておきましょう。
ハローワークへ届け出る場合に必要なもの
新規に会社を設立して、労働者を雇用した場合、以下の書類が必要です。
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険適用事業所設置届は電子申請できないため、事業を管轄するハローワークへ、書類を持参しましょう。
届出の際は、添付書類をあわせて用意するようにしてください。
- 事業所の法人登記簿膳本(コピー可)
- 事業の開始を証明できる書類(事務所開始届の写しなど)
- 労働保険関係成立届
- 被保険者全員分の雇用保険被保険者資格取得届
- 労働者の雇用関係が分かる書類(雇用契約書、労働者名簿、保険関係成立届の事業主控え、登記事項証明書、賃金台帳、出勤簿またはタイムカードなど)
雇用保険に以前加入していた労働者を雇用する場合は、雇用保険被保険者証を全員分、忘れずに提出してください。
4.優先度高:労働基準監督署への届出(10日以内)
加入が義務づけられている労働保険のうち、労災保険の手続きをするのが労働基準監督署です。
労働基準法の適用を受ける事業所すべてに、提出が求められるため、1人以上の労働者がいる場合は10日以内所轄の労働基準監督署へ届け出ましょう。
労働基準監督署へ届け出る場合に必要なもの
労働基準監督署へ届け出る書類は、以下の通りです。
- 適用事業報告:できるだけ早く
- 労働保険関係成立届:採用から10日以内
- 労働保険概算保険料申告書:採用から50日以内
それぞれ提出期限が違うため、注意しましょう。
時間外労働や休日労働の予定がある場合は、「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)」、従業員を10人以上雇用する、という場合は「就業規則届」をあわせて提出してください。
届出の際は、次の添付書類を用意しておきましょう。
- 履歴事項全部証明書
- 事業所の賃貸借契約書
労働保険料の保険料率は、業種によって異なります。
納付方法を口座振替に変えたい場合は、法人口座のある金融機関の窓口へ、「保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」を提出すると、窓口へ行く手間を省けます。
5.優先度中:税務署への届出
法人設立時、税務署へいくつかの届出が必要です。
種類は多いですが、法人登記後1ヶ月~3ヶ月くらいにやることばかりのため、仕事の合間に手続きを進めましょう。
※法人開設時に資本金1,000万円以上の場合、規定期間の課税売上が1,000万円以上の場合、消費税に関連するすみやかな届出が必要です。該当する場合は、早めに税務署へ届け出てください。
税務署へ届け出る場合に必要なもの
消費税に関連する届出が必要ない場合、以下の期限で4つの書類を提出します。
- 給与支払事務所等の開設届出書:法人登記から1ヶ月以内
- 法人設立届出書:法人登記から2ヶ月以内
- 青色申告の承認申請書:法人登記から3ヶ月以内もしくは最初の事業年度終了日のうち早い日の前日まで
- 源泉所得税に関する届出書(給与の支払いがある場合):期限なし
法人設立届出書は、定款のコピーを添えて提出します。
その他書類については、添付書類は必要ありません。
源泉徴収税に関連する届出は、従業員が10人に満たない場合、年2回にまとめる特例が受けられます。
期限はありませんが、業務の円滑化をはかるため、必要な場合は早めに届け出ておくのがおすすめです。
6.優先度中:役員報酬の決定
会社を設立したら、3ヶ月以内に役員報酬を決定しましょう。
急ぎではありませんが、設立した日から3ヶ月が過ぎてしまった場合、賃金として計上できなくなります。最優先の手続きが済んだ時点で、役員報酬を決定しておきましょう。
役員報酬は、定款もしくは株主総会で決定します。
いくらくらいの報酬にしたら良いのかわからない、という場合は、平均相場を参考に決定してみてください。
一度決定した役員報酬は、その年度内の変更ができません。
一人社長の場合の考え方、従業員が多い場合の考え方など、決定には事業規模や売上げ見込みなども関係します。
適した報酬が分からない場合は、税務知識の専門家である税理士に相談してみましょう。
7.優先度要確認:都道府県税事務所への届出
会社設立後、都道府県税事務所への届出が必要です。
東京23区の場合は15日以内、その他の地域では1ヶ月程度が期限の目安となります。
間違いがないように、事業所のある管轄の都道府県税事務所へ確認しておきましょう。
都道府県税事務所へ届け出る場合に必要なもの
都道府県税事務所には、「法人設立届出書」を提出します。
期限だけでなく必要な添付書類、手続き方法が各事務所によって変わります。
速やかに手続きを進めるために、ホームページで必要書類をたしかめておきましょう。
東京23区内で届け出る場合は、定款や登記事項証明書のコピーが必要です。
8.優先度要確認:自治体への届出
法人登記が済んだら、法人市町村民税の支払いのため、各自治体へも法人設立届出書を提出しましょう。自治体によって提出期限が違いますが、1ヶ月程度に定められているケースが多くみられます。
東京23区の場合は、都税事務所への届出が済んでいれば、改めて提出する必要はありません。
期限や添付書類、提出の有無など、事前に自治体の担当者やホームページなどで確認しておきましょう。
個人事業主から法人化した場合に必要な手続き
個人事業主から法人化した場合、別に必要な手続きがあります。
法人化にあたり、やることを覚えておきましょう。
個人事業の廃業
個人事業が成長して法人化する場合、個人事業廃業の手続きが必要です。
まったく別のビジネスをはじめる場合は、個人事業を続けながら法人設立、という道もあります。
個人事業を廃業する場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署へ提出しましょう。
廃業後に支出が発生した場合、経費として扱えないケースがあります。
支出の予定がある場合は、時期を計算の上、届出を提出してください。
提出期限は、廃業してから1ヶ月以内です。
青色申告の申請をしていた場合は、青色申告を取りやめる手続きをしてから、法人として「青色申告承認申請書」をあらためて提出しましょう。
個人事業の事業・債務の移行
個人事業で入手した資産や債務を、設立した法人引き継ぐ場合、移行手続きが必要です。
移行の方法は、資産や債務の種類によって変わります。
どのような手続きが必要なのか、チェックしておきましょう。
資産を売買する場合
個人事業主として所有していた土地や建物、設備、備品などを設立した法人に売買するケースです。
個人事業主と設立した法人との間で売買契約書を作成し、個人事業主が売却、法人が買い取る形にします。
資産を賃貸する場合
土地や建物、設備、備品などを個人事業主として保有し、設立した法人との間に賃貸契約を交わすケースです。
設立した法人からの賃借料は、個人として確定申告します。
資産を出資する場合
土地や建物、設備、備品などの現物を、設立した法人に出資、資本金に加えるケースです。
個人事業主名義になっている場合は、資産に応じた名義へ変更しておきましょう。
金額が500万円を超える場合、裁判所選任の弁護士や公認会計士による調査が入る旨、あわせて覚えておきましょう。
必要に応じてするべき手続き7つ
法人を設立したら、必要に応じてするべき手続きがあります。
各機関への書類提出と平行して、準備を進めておきましょう。
主に求められる7つの手続きについて、解説いたします。
1.許認可申請
会社設立する業種によっては、許認可申請が必要です。
- 建設業
- 運送業
- 旅行業
- 飲食業
- 酒やタバコ、中古品の販売業
- 理美容業
- クリーニング業
- 金融業
- 警備業
など、取り扱う業種によってさまざまな許認可が求められます。
必ず事前に、管轄の機関へ申請を済ませておきましょう。
手続きが難しい場合は、許認可の専門家である、行政書士へ相談してみてください。
2.電話番号やドメイン取得
会社設立にあたり、事務所の電話番号やホームページ用のドメイン、メールアドレスなどの取得が必要になります。
NTTから電話加入権を購入する場合、36,000円が必要です。
月々の使用料金が若干割高になりますが、手頃な価格で利用できるNTTのライトプラン、基本使用料や通話料が安い光IP電話、スマートフォンなど、さまざまな方法がありますので、予算や事業の予定継続年数に応じて決定してください。
電話番号やドメインがないと、名刺が刷れない、ホームページを作成できない、といった事態に陥ってしまうため、早めに手続きを済ませておきましょう。
3.備品整備
オフィスや店舗を運営するにあたり、必要な備品がたくさんあります。
- デスクや椅子、ロッカーやホワイトボード、本棚などのオフィス家具
- 掃除機や冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、冷暖房などのオフィス家電
- カーテンや傘立て、靴箱、ゴミ箱、時計などのオフィスインテリア
- パソコンやプリンター、コピー機、シュレッダー、電卓などのOA・事務機器
- 文具やコピー用紙、ティッシュ、電池、洗剤などの消耗品
など大きな物から小さな物まで、事業に応じた備品が必要です。
会社を運営する上で、絶対に必要なアイテムから購入やリース手続きを済ませましょう。
4.名刺やパンフレット、ホームページの作成
事業で使う名刺やパンフレット、ホームページなどは早めに準備しておきたい部分です。
事業計画書とあわせて提示できると、融資や助成金、補助金の審査が通りやすくなる場合もあります。
取引先や融資先、顧客から信頼を得るために、デザインやロゴ、文章はプロへ相談するのがおすすめです。
ホームページやSNSなどを上手に活用して、広く集客できる体制を整えておきましょう。
5.会計処理環境の準備
法人を設立したら、経理のための会計ソフトが必要です。
「お金のことは税理士にお願いするから大丈夫」
と考えがちですが、入力は手元で行いデータをもとに税理士が確定申告、というケースが少なくありません。
すべてを丸投げしたい場合は、記帳代行をあわせてお願いしておきましょう。
会計ソフトには主に、クラウド型とインストール型があります。
確定申告の様式やルールは、年度によって変更が加わるケースが多いため、都度アップデートされたソフトを利用できるクラウド型がおすすめです。
6.融資の申請
会社設立にあたり融資が必要な場合、法人登記直後の申し込みがおすすめです。
起業後すぐに受けられる新創業融資は、事業計画書に問題がなければ、審査に通りやすいと言われています。
日本政策金融公庫の制度で、新たに事業をはじめる、または税務申告2期を迎えていない事業者が対象です。原則無担保無保証人、代表者個人には責任が及ばないため、法人設立したばかりの人が利用しやすい制度になっています。
事業開始後、一時的に自己資金が不足する見込みがある、事業がすぐ軌道にのらなかった場合に備えたい、という場合は、新創業融資を活用して企業活動を安定させましょう。
7.助成金・補助金の申請
会社設立にあたり、助成金、補助金が必要な場合は、申請を済ませておきましょう。
助成金、補助金はかならず申請が通るわけではありません。
準備する書類が非常に多いこと、手続きが煩雑なことからも、入念な計画、準備が必要です。
各助成金、補助金の申請期限を確認の上、審査に通りやすい事業計画書、収支計画書などを作成しておきましょう。
助成金や補助金申請にくわしい、専門家の手を借りるのも良い方法です。
助成金、補助金は原則後払いとなります。
事業を安定して継続するために、自己資金をきちんと用意した上で、申請作業を進めてください。
法人登記後のやることリスト
法人登記後の手続きをスムーズに進めるために、やることリストを用意しておきましょう。
主に必要な手続きを、以下にリスト化しました。必要に応じてご活用ください。
□法人用銀行口座の開設
□年金事務所への届出
□ハローワークへの届出
□労働基準監督署への届出
□税務署への届出
□自治体への届出
□都道府県税事務所への届出
□役員報酬の決定
□許認可申請
□電話番号やドメイン取得
□備品整備
□名刺やパンフレット、ホームページの作成
□会計処理環境の準備
□個人事業の廃業、資産。債務の移行(個人事業主から法人化した場合)
□融資の申請
□助成金・補助金の申請
それぞれの手続きに必要な持ち物、書類をチェックの上、計画的に進めましょう。
まとめ
下記の流れで、会社設立後に必要なことを解説してきました。
- 会社設立後に必要な8つの手続き
- 個人事業主から法人化した場合に必要な手続き
- 必要に応じてするべき手続き7つ
- 法人登記後のやることリスト
法人登記後は、やることがたくさん待っています。
必要な手続きをうっかり忘れてしまい、トラブルになるケースもあるため、チェックリストを作成して、一つ一つ進めていきましょう。
自分では手続きや作業が難しい部分、専門的な知識が必要な部分は、専門家の力も借りながら、事業を軌道に乗せてください。
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